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静かな森の中をひたすら歩き続ける。 どこへ向かうというわけではない。気まぐれと思いつきと暇つぶしを実行するための材料、ゆっくり探しだ。 用が無いときは嫌というほど目にしている気がするが、いざ探してみるとなかなか見つからない。 たまたま出くわさないだけで何が原因だというわけではないのだろうが、そうなると諦めがつかず余計に厄介だ。 「なんでこういう時に限って・・・」 ブツブツと文句をたれながら歩いていると、少し先の茂みがガサゴソと動くのが見えた。 「ゆっくりしていってね!」 すかさず茂みが動いたあたりに向かって思いっきり叫ぶ。すると・・・ 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「ゆっきゅりしていっちぇにぇ!」」」 ビンゴ!元気な返事とともに茂みから飛び出してきたのはれいむ種とまりさ種で構成されたポピュラーなゆっくり一家。 親であろう成体のれいむとまりさが一匹ずつに、赤ゆっくりが三匹。子供の内訳はれいむ二匹にまりさ一匹。 思ったより子供の数が少なかったが、この際仕方ない。これ以上探し回るのはごめんだ。 「ゆ!おにいさんはゆっくりできるひと?」 「もちろんゆっくりできるよ。その証拠にお菓子をあげよう」 「ゆ!おかち!?」 「れいむあまあまたべちゃーい」 「さっさとおかちをもってくるんだじぇ!じじい!」 「はいはい。ほら」 鞄からクッキーを取り出してゆっくり達の前にばら撒いてやる。 昨日テレビの裏から出てきたもので消費期限を見たら一年以上前だった。 「「む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせ~♪」」 「「「む~ちゃ♪む~ちゃ♪ちあわちぇ~♪」」」 潰してぇ。いや、いかん。 落ち着け。ここでこいつらを殺したらまた探し直しじゃないか。 自分を抑えて我に返る。しかしこのままもっとよこせだとか言われ日には自制できる自信がないので先手を打つ。 「ところで最近おもしろい遊びを思い付いたんだ。お兄さんと一緒に遊ばないかい?」 「ゆ?おにいしゃんあしょんでくれるの?」 「れいみゅもあしょびたーい」 「しかたないからまりしゃしゃまがあしょんでやるんだじぇ。かんしゃしゅるんだじぇ」 「というわけだけどいいかな?」 一応親ゆっくりに訊ねてみる。 「いいよ!れいむのちびちゃんたちのかわいさにおにいさんもめろめろだね!」 「せいぜいまりさのこどもたちをよろこばせるんだぜ!」 「それじゃあみんなを遊び場まで連れて行くからこの籠の中に入ってくれ。少し狭いけどすぐに着くから我慢してね」 正直わざわざ運ぶのは面倒くさいが、ゆっくりの足に付き合っていたら日が暮れてしまうので仕方ない。 こうしてゆっくり達を籠に放り込んでいく。少し狭いとは言ったものの、それなりに大きい籠なので 底に親ゆっくりを並べて入れて、その上に赤ゆっくりを置けば全員問題なく収納できた。 五匹のゆっくりが入った籠を背負って歩き続ける。 籠の中のゆっくり達は楽しそうな声で何して遊ぶんだろう、楽しみだねと語り合っていた。 よほど期待しているのか歌まで歌い始めた。ここまで無警戒なのもどうかと思うがおかげで手荒な真似をせずに済んだから 責めちゃいけないな。警戒されるようなら無理矢理掻っ攫うしかなかったのだから素直に付いてきてくれたのはありがたい。 嫌がるゆっくりを無理矢理・・・っていうのは趣味じゃないし。 たどり着いたのは崖のてっぺんだ。垂直に切り立った崖はとても高く、下を見れば目が眩むまさに断崖絶壁だが それ故に見晴らしは最高だった。崖の下にはさっきまでいた森が広がり、それほど遠くない場所に広い川が流れている。 崖っぷちに籠を下ろし、ゆっくり達を出してやる。 「ほーら、ついたぞー」 「ゆ! ここどこ?」 「ゆゆ!たきゃーい」 「おちびちゃん!あまりまえにでちゃだめだよ!おちちゃうよ!」 「しゅごいよみゃみゃ!もりしゃんがちっちゃくみえるよ!」 「みりょ!ひとがごみのようだじぇ!」 初めて見る絶景にゆっくり達は思い思いの感想を述べる。 早速鞄から今日の本題を取り出しゆっくり達に説明を始める。 「それじゃあ遊びについて説明するよ。みんなにはこの崖からジャンプしてもらうんだ」 「そんなことしたらしんじゃうよ!そんなこともわからないの?ばかなの?しぬの?」 「わかってるって。だからみんなにはこのパラシュートを付けてもらうんだ」 「ゆ?ぱらしゅーと?」 「そう。これを付けてると高い所から落ちても平気になって空を飛ぶような気分を楽しめるんだ」 「おしょらをとべるの?」 「おもしろそー」 「さっさとそにょぱりゃしゅーとをよこすんだぜ!」 空を飛べると聞いて一気に食いついてきた。早速始めるとしよう。 「それじゃあ一人ずつ飛ぶから順番を決めるよ。まず子供たちが先でお母さんたちがその後。いいよね?」 「わかったよ。れいむたちはおかあさんだからちびちゃんたちにさきをゆずるよ」 「それじゃあ次は子供たちの順番だね。最初はこのれいむでその次にこのれいむ。まりさは最後だ」 「どぼじでまりしゃがしゃいごなんだじぇぇぇぇぇ!!!」 「さっきじじぃって呼んだからに決まってんだろうが糞饅頭。つかお前さっきから際立ってむかつくんだよ」 なんて声に出したりはしない。 どうにかこうにか赤まりさをなだめすかしてパラシュートの取り付け作業に入る。 まずは一番手の赤れいむ。ゆっくりサイズのお手製小型パラシュートを頭頂部の髪の毛に取り付けてやる。 「さて、こっちは準備完了だ。れいむ。心の準備はいいかい?」 「ばっちりだよ!」 「じゃあいくぞ!せーの・・・そいやぁ!」 崖に向かって思いっきり赤れいむを投げる。 赤れいむはしばらく弧を描いて飛んだ後、空気抵抗によりゆっくりと落下していった。 「ゆゆー♪れいみゅおしょらをとんでるよー♪」 大成功だ。赤れいむは風に乗ってゆっくりと崖を離れていく。 「すごーい。れいむおそらをとんでるよー」 「かっこいー」 「おにぇーちゃんいいなー」 「れいみゅ!れいみゅがとばにゃきゃまりしゃのばんがこないんだよ!はやくしちぇね!」 「だってさ。次いくよれいむ」 「ゆ!ゆっきゅりわかっちゃよ」 先ほどの赤れいむと同じ要領でパラシュートを付けてやる。 「準備はいいかい?」 「ゆっきゅりじゅんびできちゃよ!」 「それじゃあ・・・そいやぁ!」 まるでデジャヴを見ているかのように、先の赤ゆっくりと同じ様に風に乗っていく。 と思いきや突如強風が吹き荒れ、それに煽られたパラシュートはあれよあれよというまに明後日の方向に飛んでいく。 「ゆゆ!れいむすごーい。あんなとおくまでとんでるよ」 ゆっくり達は呑気なことを言ってるがパラシュートは川のほうに向って飛んでいく。 吸い寄せられるかのように川に向って飛んで行き、とうとう着水した。 赤れいむを付けたままのはずのパラシュートがそのまま流されていく。これでは赤れいむはとっくに水を吸って崩れているだろう。 ゆっくり達が騒ぎ出すんじゃないかと心配したが、見ると呑気に自分の番を楽しみにしている。 どうやら川のあたりが見えていないようだ。心おきなく次に執りかかれる。 「お待たせ!じゃあ次はまりさの番だね」 「ゆ!さっさとぱりゃしゅーとをちゅけるんだじぇ!」 「はいはい。でもまりさ。まりさの場合は帽子が邪魔で頭にパラシュートを付けられないんだ」 「どぼぢでぇぇぇぇぇ!!!」 「大丈夫だよ。帽子をとればいいんだ」 「しょんにゃこちょできるわけないでしょぉぉぉぉぉぉ!!おぼうしがないとゆっきゅりできにゃいんだよぉぉぉぉ!!!」 「じゃあこうしよう。お母さんにまりさの帽子を預かっててもらうんだ。これなら安心だろ?」 「ゆ!おきゃーしゃんがあずかってくれりゅにゃりゃあんしんだにぇ!」 「そういうことだ。まりさの帽子預かっててくれるか?」 「まりさがぱらしゅーとするためだからね。おかーさんがゆっくりあずかるよ!」 問題解決。早速まりさの頭にパラシュートを取り付ける。 「それじゃあ逝くぞまりさ!あーゆーれでぃ?」 「いえー!」 「おーけー・・・そいやぁ!」 三度目。今度は突風も吹かずにまりさはふわふわと空を飛んでいく。 と、そんなまりさに背後から近づく影が一つ。 「あー、あれは・・・」 「うー♪うー♪」 「「れ・・・れみりゃだぁぁぁぁぁぁ!!!!」」 これは珍しい。夜行性のれみりゃがこんな真昼間から出現するとは。 小さな羽でぱたぱたと羽ばたくれみりゃは少しずつ赤まりさに近づいていく。 「ばでぃざぁぁぁぁぁ!!にげでぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れみでゃはぢびじゃんにぢがづぐなぁぁぁぁ!!!」 親ゆっくりは崖の端ぎりぎりから半狂乱になって叫ぶが声が届いている様子はない。 そうこうしているうちにれみりゃが赤まりさを捕まえてしまった。 「ゆ? れ・・・れみりゃぁぁぁぁぁ!!!???」 「うー♪あまあまいただきまーす♪」 「ゆぁぁぁぁぁ!!!はなちぇぇぇぇぇ!!!まりしゃはおいちくにゃいんだじぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなことないどー♪あまあまとってもおいしいどー♪」 「ゆ・・・ぐぁ・・・。もっど・・・ゆっくち・・・ちたかっ・・・」 結局、赤まりさはれみりゃのお腹の中に収まってしまった。 元々赤ゆっくりが補食種から逃れること自体困難なのに、逃げ場がない空中で捕まってしまったのではどうしようもない。 れみりゃは赤まりさを残さず食べるとどこかに行ってしまった。 「ゆう・・・れいむのおちびちゃん・・・」 「れいむ、しっかりして。しんじゃったれいむのぶんもまりさたちがゆっくりしよう?」 足元では親まりさが親れいむのことを必死に慰めていた。 こいつらはもう素直に飛んではくれないだろう。この辺が潮時だ。 「ゆ゛っ・・・!?」 「ゆげっ・・・!?」 右手でれいむの髪を、左手でまりさの髪を鷲掴みにし崖に向かって突き出す。 「ゲームオーバーだね。君たちはもう必要ないから死んでもらうよ」 「どぉゆうごどぉぉぉぉぉ!!??」 「どうゆうことって言った通りの意味だよ。どうせ君たちもうパラシュートはやってくれないだろ?」 「あだりまえだぁぁぁぁ!!!」 「じゃあこれでおしまい。嫌がってるのに無理矢理飛ばすってのは面白くないからね。もうパラシュートは意味がないんだ」 「いみがないならごろざなぐでもいいでじょぉぉぉぉぉ!!!」 「そんなことないさ。君たちが死ねば早く家族そろってゆっくりすることができるんだよ?あっちでね」 「どぉゆうごどだぁぁぁぁぁぁ!!!」 「まず赤まりさはすでにあっちに逝ってるだろ?あと君たちは気づいてなかったみたいだけど二番目の赤れいむは川に落ちたんだよ」 「ゆ゛っ!?うぞをづぐなぁぁぁぁぁ!!!!」 「本当さ。今頃お魚さんの餌になってるよ。そして最初に飛んだ赤れいむも近いうちに後を追ってくるからね。これで一家勢ぞろいさ」 「でいぶがあどをおっでぐるっでどういうごどぉぉぉぉ!!!??」 「簡単さ。あんな小さな子が一人で生きていけるわけないだろう?。そう遠くないうちにれみりゃなり野犬なりに食べられちゃうさ。 まぁそれを言ったら他の赤ゆっくり達も無事に飛び終わったところで同じことになってたんだけどね。 こんな広い森で探せるわけないじゃないか。今の今までそんなことにも気付かなかったのかい?」 「ふざげんなぁぁぁぁ!!くぞじじぃぃぃぃぃ!!!」 親ゆっくり達は自暴自棄になって喚き散らし、ひとしきり手の中でもがいた後おとなしくなった。 もう正気ではいられないのか、虚空を見つめてブツブツとうわ言を呟いている。 これではもう遊べないし気持ち悪いからさっさと捨ててしまおう。ポイッとな。 ひゅ~~~~~~~~・・・・・・ 二匹のゆっくりの姿がどんどん小さくなっていって、とうとう点になってしまった。 「さて、帰るか」 夕飯何にしよ・・・。 おまけ 「たちゅけてぇぇぇぇぇぇ!!!」 静かな森の中で、一匹の赤れいむの叫び声が響いていた。 赤れいむの頭に取り付けられたパラシュートは木の枝に引っかかり、赤れいむは宙づりの状態になっていた。 叫び声に気づいた付近に住む大人まりさが駆け付ける。 「ゆ!?ど、どうしたんだぜ!?」 「たしゅけてぇぇぇ!おりょしてぇぇぇぇ!!」 「わかったぜ!いまたすけるんだぜ!!」 まりさは木の幹に思いっきり体当たりをした。木を揺らして赤れいむを落とすつもりなのだろう。 しかし赤れいむが引っ掛かった木はなかなか大きく、ゆっくり程度の体当たりではびくともしなかった。 「だめだぜ・・・まりさじゃどうにもできないんだぜ・・・」 「しょんにゃぁぁぁ!たしゅけてぇぇぇ!!」 「ちょっとまってるんだぜ!いまどすをよんでくるんだぜ!!」 「ゆ・・・どす?」 「そうなんだぜ!どすならこんなきなんかひとひねりなんだぜ!」 こうしてまりさは群れの長たるドスを呼んでくることとなった。 しばらくするとどこからか地響きが聞こえてきて、それはだんだんと赤れいむに近付いてきた。 そしてドスは姿を現した。普通のゆっくりを何百匹も積み上げたかのような巨体を持つドスまりさ。 ドスは赤れいむを安心させるために声をかける。 「ドスが来たからにはもう安心だよ。今助けるから待っててね!」 「さすがどすだぜ!たよりになるんだぜ!」 しかし赤れいむが引っ掛かっていた場所はドスの巨体でも届かなかった。 そこでドスは先ほどのまりさが行ったように木に体当たりを仕掛けて赤れいむを落とすことにした。 落ちた赤れいむが潰れないように、赤れいむの真下に大人ゆっくり達を密集させてクッションにする。 そして幹を挟んだ反対側でドスが気合いを入れる。 「それじゃあいくよ!せーの・・・そいやぁ!」 ドーーーーーーーーーーン!!! 轟音とともに木が大きく揺れる。と思いきや・・・ 「た・・・たおれるぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆあああああぁぁぁぁぁ!!!」 「ゆぶぇ!!」 「げぶぅ!!!」 「ぐぎぇ!」 ドス渾身の体当たりは木を揺らすどころか思いっきりへし折ってしまった。 木は赤れいむの方向に向かって倒れ、赤れいむはおろかクッションとなっていたゆっくり達も潰してしまった。 こうしてゆっくり一家はその日のうちに家族全員が揃うことができたのだった。 ちなみにその後例のドスは同族殺しとして群れの信用を失い、ほどなくして群れは解体したという。 おしまい 【あとがき】 初投稿なのでお見苦しいところが多々あったかもしれませんがご容赦ください。 赤ゆっくりのしゃべり方が思ったよりめんどくさかった・・・。 それはそうと皆さんもテレビやたんすの裏からクッキーとかポテチとか出てきたりしますよね。え?ない?
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数時間団欒させた後、俺は再び部屋に踏み込んだ。 「ゆっ!!」 親れいむ共が例によって罵声を浴びせてくる。 「ちかづかないでね!!おちびちゃんたちにちかづかないでね!! くそじじいはゆっくりしないであっちにいってねぇ!!」 いまだに屈伏しきれないのは、ひとえに子を守りたいがゆえか。 「今日はお前らに用があるんだ」 俺はそう言うと、親れいむ共を一匹ずつ取りだした。 「ゆゆっ!?」 今まで何十日も、赤ゆっくりだけを取り上げられ、なぶり殺されてきた。 しかし今日に限っては、自分たちが取り出された。 ということは。 親れいむ共がぶるぶる震えだした。 「たっぷり付き合っていってくれよ」 「ゆっゆっゆっゆっ、お、おに、おにいさ」 震えながらも、子れいむが気丈に問いかけてきた。 「あ、あか、あかちゃんはたす、たすけてね?」 「れいむが、れいむがいじめられるから、あかちゃんは、あかちゃんはゆっくりさせてね!」 れいむ共が揃って懇願している。 その目元には安堵さえ浮かんでいた。 ようやく子供たちを死なせずに助けられる。 そして死ねる。そんな安堵だろう。 あの体験を経た今、 子供に死なれて呪われるよりも、自分が殺されたほうがましだ。 そういう思考にたどり着いたようだ。 「ああ。お前たちががんばれば、赤ちゃんたちは一匹も傷つけない。 お前たちさえがんばってくれればね」 「ゆっくりがんばるよ!!」 「れいむがゆっくりがんばっていじめられるよ!!」 「あかちゃんはたすけてね!!ごみくずでもやくそくはまもるよね!!」 俺に対する態度はだいぶ卑屈になってきたと思うのだが、 どうも、なにかの拍子にゴミクズ発言が飛び出す。 意外とれいむ種が一番タフなのかもしれない。 そんな失言は聞き流してやり、俺は早速れいむ共をカートに詰め込んだ。 別室に入ると、そこには大掛かりな機械が並んでいた。 どれも一見見たところでは用途がわからないが、わからないなりにれいむ共はがたがた震えている。 テーブルの上にれいむ共を並べ、使用人に見張らせたあと、 俺は先ほどの部屋に戻って赤ゆっくり共をカートに乗せ、連れてきた。 「ゆぅー!しゅーりしゅーりちちゃあい!!」 「おきゃあしゃん!にゃにちちぇるにょ!?」 「まりしゃとあしょんでよ!ゆえーん!」 「ゆっ!?おしょらをちょんでるみちゃい~♪」 カートの籠で喚いている赤ゆっくり共を取り出してれいむ共の傍に並べる。 「なにじでるのおおおおおおおお!?」 「ぐぞじじいいい!!あがぢゃんをばなぜええええええ!!」 「やぐぞぐう!!やぐぞぐまもれええええごみぐずうううう!!」 「何もしないさ。みんな、自分のお母さんのところに集まってね」 歯をむき出して飛びかかってくるれいむ共の方に、赤ゆっくり共を追いやる。 自然と、それぞれが自分の生みの親のところに集まっていった。 「おぢびぢゃんにはざわらないでねええ!!」 叫び続けるれいむ共。 まず、一匹の子れいむを取り上げた。 こいつの子は、赤れいむ二匹と赤まりさが一匹だ。 子れいむと三匹の赤ゆっくりを、部屋の一角に連れていく。 そこは仕切りで20cm四方余りに区切られていて、赤ゆっくりではそこから出ることはできない。 その仕切りの中に赤ゆっくりを三匹とも投げ込んだ。 「ゆべっ!」 「いちゃあい!ゆわぁぁん!!」 「ぐぞじじいいいいいいざわるなあああああああ!!」 暴れる子れいむを持ち上げ、上を向かせる。 赤ゆっくりが閉じ込められた仕切りの真上には、天井から縄がぶら下がっていた。 その縄を見せつけ、俺は言った。 「噛め」 「ゆゆっ!?なわさんはゆっくりできないよ!あまあまをゆっくりちょうだいね!!」 「噛まないなら子供の上に落とすぞ」 「ゆっ!」 ここから落とされては、真下にいる子供がすべて自分の体に押しつぶされてしまう。 慌てて開かれたれいむの口に縄を近づけ、噛ませてやる。 手を離すと、歯だけで自重を支える形になった。 「ゆぅぅ!!おきゃーしゃん!?」 「おりちぇきちぇにぇ!!しゅーりしゅーりしちぇにぇ!!」 状況がわかっていない赤ゆっくり共は、 飛び跳ねながら真上の母親の顎に呼びかけていた。 上の子れいむはぶるぶる震え、答えることもできない。 口を開けばどうなるかぐらいはわかるようだ。 そこで俺はれいむに鉄板を見せてやった。 鉄板は幅3cmとぶ厚く、およそ20cm四方の正方形をしている。 鉄板の片側の中心には紐を通す穴があり、縄が結ばれていた。 「これをこいつらの上に落としたらどうなると思う?」 「ゆぐぅううううううう!?」 「約束通り、俺はこいつらには何もしない」 鉄板の縄を子れいむの口の中に突っ込み、噛ませる。 「じゃ、頑張ってくれ」 「ううううううううぐううううううううううう!!!」 必死に首を振る子れいむの体から、俺は手を離す。 天井の縄と鉄板の縄を噛み、子れいむはくぐもった呻きを漏らしながら耐えていた。 どちらを放しても下の我が子はお陀仏だ。 この鉄板の重量は5キロ。 成体ゆっくりにとってはそれほどの重みではないだろうが、赤ゆっくりを潰すには十分だ。 そしてこの子れいむの顎には、鉄板に加えて自身の体重がすべてかかっている。 下の赤ゆっくり共は、鉄板がつり下げられるのを見て、 ようやく状況が掴めたようだ。 それでもどこか他人事のような気楽さで、母親に向かって命令した。 「ゆっ!おとちゃにゃいでにぇ!きゃわいいれいみゅたちがゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おきゃーしゃんはゆっきゅりちにゃいでがんばっちぇにぇ!!」 「ゆうううううぐううううういいいいいいいいいーーーーーー」 子れいむの表皮からは、早くも脂汗のようなものがじっとりとにじみ出してきた。 どれだけ耐えられるだろうか。 他のゆっくりれいむで実験したところ、一時間もたなかった。 しかしその場合は、ゆっくりれいむの真下に置いてあったのは剣山だ。 自分自身ではなく我が子の命が危険にさらされたこのれいむが、 どれだけ記録を伸ばしてくれるか楽しみだ。 次の子れいむに手を伸ばす。 こいつの子は、赤れいむと赤まりさのセットだ。 「やべでえええええあがぢゃあああああんんん!!!」 二匹の赤ゆっくりを、透明なガラスケースの中に入れる。 ガラスケースの前方と後方は強化ガラスで、内部が見通せるようになっているが、 左右両脇はぶ厚くなめらかな鉄板になっていた。 鉄板はきちんと壁の役割を果たし、ガラスケースとは隙間なく接している。 鉄板の外側には、ばね仕掛けのような装置がついていた。 「おきゃあしゃん?これにゃに?」 「ゆっきゅりできりゅの?」 「おちびちゃん!!にげて!!にげてえええええ!!」 装置のスイッチを押す。 すると、ゆっくりと鉄板がケースの内側に向かってスライドしはじめた。 「ゆゆっ!?」 「かべさんこっちこにゃいでにぇ!!」 慌ててケースの中心部に集まる赤ゆっくり共。 二個の饅頭に向かって、鉄板は無情にじりじりと近づいていく。 「最終的には、あの鉄板はぴったりくっついてあの子たちを押しつぶす」 「ゆううううあああああ!!おにいざん!!あがぢゃんだずげでええええ!!!」 「いや、助けるのはお前さ」 そう言ってやり、子れいむを別の装置に設置する。 今度の装置は、一言でいえばハムスター用の車輪だ。 大きな車輪は、片側が機械に取り付けられており、 車輪内部は空洞になっている。 車輪のもう片側は丸く開かれ、ゆっくりが入れるようになっていた。 その中に子れいむを入れてやる。 「走ってみてくれ」 「ゆゆぅ!?おにいざん!?ぞんなごどよりあがぢゃっ」 「走れ。子供が死ぬぞ」 「ばじりまずうううう!!!」 言う事を聞かなければ子供を殺す、という脅しだととらえた子れいむは、一心不乱に駆けはじめた。 必死にぴょんぴょん飛び跳ねる子れいむに向かって、俺は先ほどのケースを指し示してやった。 「あれを見ろ」 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ……ゆっ?」 見ると、赤ゆっくり両脇の鉄板が止まっている。 「ゆゆっ!あかちゃんゆっくりしていってねゆゆぅ!?」 「ゆあぁぁかべさんゆっきゅりしちぇよおぉぉ!!」 「おきゃあしゃあああんはしっちぇえええええ!!!」 安堵して走るのをやめた途端に、鉄板が再び赤ゆっくりに向かって動きはじめた。 慌てて走るのを再開すると、鉄板の動きが少しずつ遅くなっていき、 全速力で走ることでようやく止まった。 この二つの装置は連動していた。 「お前が走ってその車輪を動かしていれば、あの壁は動かない。 だが、走るのをやめたりゆっくり走ったりすれば、赤ゆっくりは潰れてしまうぞ」 「ゆぅうううううううううーーーーーっ!!!!」 説明を理解したらしく、必死に全速力で走り続ける子れいむ。 向かい合った鉄板の距離は、今のところ30cm足らずぐらいか。 「ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆはっ、ゆっぐりでぎないいいいいいい!! おにいいざあああああんゆるじでえええええええーーーーーーーーっ」 叫ぶとそのぶん体力を消耗するのではないか。 しかし、饅頭はそのあたり人間と違うのかもしれない。 ゆっくりは声を出すことでも疲れるのかどうか、それはこれから確かめてみよう。 次の子れいむも、似たような装置に設置する。 こいつの子は、赤れいむが一匹だけだった。 今度は、まず子れいむから処置した。 子れいむを、小さな箱に入れる。 その箱は透明だが、防音に優れた特殊なガラスを使っており、 密閉すれば外側の音は入ってこないようになっている。 そして、長方形の箱の内部は、ガラス壁によって真ん中で区切られていた。 片側の空間に子れいむを入れる。ちょうどぴったりだ。 そしてもう片側に赤れいむを入れるのだが、 こちら側には機械が据え付けられてある。 機械の中心部に赤れいむをセットし、針金で縛りつける。 「ゆびぃい!いちゃいいぃ!うごきぇにゃああい!! ゆっきゅりしちゃいよぉおおお!!」 早くも泣きながら抵抗を始めた。 ガラス壁に遮られ、その声は母親の元には届かないのだが、 その様子を目の当たりにして母親は涙にくれる。 「ゆっくりさせてあげてねええぇぇ!!ゆっくりさせてねぇぇぇ!!」 箱の蓋を閉める前に、装置のスイッチを入れた。 「ゆびゃっ!?」 びぐん、と赤れいむが跳ねた。 針金に縛りつけられたまま、びぐびぐびぐと痙攣しはじめる。 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「あああああああおぢびじゃあああああんん!!?」 説明してやる。 「電流が流れてるんだよ。全然ゆっくりできないものだ」 「ゆびゃびゃびゃああああ!!!いぢゃいぢゃ、ゆぎゅ、ゆっぎゅり、でぎぢゃあああいいいいびゃあああっ」 言葉が発せられるのだからまだまだ余裕がある。二十ボルトに足りない程度だ。 「今はまだ弱いけど、どんどん強くなって、そのうち永遠にゆっくりすることになる」 「いやあああああ!!!でいぶのあがぢゃんをだずげでねええええええ!!!」 「大丈夫、歌えばいい」 「ゆっ?」 「歌え!!」 怒鳴りつけてやると、れいむはおどおどと歌いはじめた。 「……ゆ、ゆーゆーゆー、ゆっゆっゆっゆゆゆ~♪」 すると、子れいむの痙攣のペースが見る間に落ちてきた。 「ゆびぃ……ゆびぃ……ゆびゅ!……びぃ……」 「お前が歌っているかぎり、電流がゆっくりしてくれる。 大きな声で歌えば歌うほど、赤ちゃんはゆっくりできるぞ。 毎日やってることだからできるだろう」 「ゆゆっ!!おうたをうたうのはとくいだよ!!」 「頑張ってくれ。ほら、また流れだしたぞ」 「ゆうぅぅ!?ゆっゆっゆ~!!ゆゆゆゆゆ~~!!」 子れいむの入っているスペースには、マイクが備え付けられていた。 このマイクと子れいむの機械はやはり連動しており、 マイクに向かって声をあげれば、声量に応じて電流が弱まる仕掛けになっていた。 実際のところ歌でなくてもいいのだが。 これで箱を密閉すれば、外から音が入ってくることもなく、 この親れいむは自分の声だけで電流を抑えなければならない。 「ゆっゆっゆっくり~♪ゆゆゆゆ~~ゆっくりしていってねぇぇ~~♪」 歌っているうちに自分もゆっくりできるのか、この子れいむはどこか余裕のある表情だった。 最後に親れいむ。 親れいむの赤ゆっくりは三匹だった。珍しく三匹ともまりさ種だ。 その三匹を、やはり透明なケースの中に入れる。 ケースは小さく、20cm四方の立方体といったところだ。 この装置は単純なものだった。 密閉されたケースの上部に、内部につながるホースが固定されている。 そのホースから、水がちょろちょろと流れ出し始めていた。 「ゆゆっ!?おみじゅしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「おみじゅしゃんはいっちぇこにゃいでにぇ!!」 しかし、見るまに水は床一面に広がっていく。 「おちびちゃんたち!!ゆっくりしないでおぼうしさんにのってね!!」 箱の外側から母親が指示する。 慌てて帽子を下に敷き、赤まりさ共は水に浮かびはじめた。 「浮かんでいれば今のところは大丈夫だろう。 だが、そのうち水でいっぱいになるぞ」 密閉されたケースは、やがて水で満たされるだろう。 そうなれば、帽子に浮かんでいようが関係なしに全身が水没することになる。 「あがぢゃあああああんん!!ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 「飲んでやればいい」 箱の上方には、水を注入するホースとは別に、 ちょうど親れいむの口の高さにストローが突き出ていた。 ストローの下端はケースの床面に届いている。 「お前が水を飲めば、いつまでもケースが水でいっぱいになることはない。 赤ちゃんたちもゆっくりできるぞ」 「ゆっくりおみずさんをのむよ!!!ごーく、ごーく!!」 たちまちストローに食いつき、水を飲み始める親れいむ。 赤まりさ共が親に声援を送っている。 「ゆっきゅりしにゃいではやきゅのんでにぇ!!」 「ゆっゆっゆ~♪ぷかぷかきみょちいい~♪」 そこで親れいむの口をガムテープで塞いだ。 「ゆびゅっ!?」 ストロー以外の部分が綺麗に閉じられた。 これで、口の端から水を吐き出すというようなことはできない。 親れいむはますます必死になって飲みはじめた。 れいむ共の踏ん張りは想像以上だった。 それはそのまま、子への愛、そして子を死なせることへの恐怖をも表していた。 すでに開始から二時間が経っている。 どのれいむも、子を殺すまいと必死になっていた。 「ぅうううぅうううぐぐぐぐぐぎぎぎぎぎぎいいいいいいがががががが」 天井からぶら下がっている子れいむは、 がたがた震え全身から粘液をぼたぼた滴らせながら、気丈に顎を噛み合わせつづけていた。 ぎりぎり絞められている口元からは、餡子の混じった涎がひっきりなしに滴っている。 歯茎から餡子、つまり血が出ているようだ。 精神的に限界を超えているらしく、 両目は涙を流しながらぐるぐると高速で回転ている。 下顎からはしーしーが漏れ出していた。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 下の赤ゆっくり共は、最初のほうこそ親を応援していたが、 いまではそれにも飽き、呑気に身を寄せ合って眠りこけていた。 「ゆぎゅううううううう!!ゆっぎゅ、ゆっぎゅぢじだあああああいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「かひゅうー…………ゆひゅうー…………ゆぅううううううう!!!」 車輪の中の子れいむは、いまだに必死に走り続けていたが、 最初のほうのペースは見る影もなく、うつろな目でぼてぼてと飛び跳ねているだけだ。 少量の餡子を断続的にはき散らしているが、 すでに体液は汗(のようなもの)にして流しつくしたらしく、かさかさに乾いている。 甘やかされた飼いゆっくりなら、十分走っただけでもぜいぜい息切れする。 それがもう二時間だから大したものだが、肉体的にはとっくの昔に限界を超えている。 それでも精神力だけで必死に体を鞭打っているが、 大きくペースの落ちた走りは、鉄板の移動を多少遅らせこそすれ、止めることはできなかった。 今では二匹の赤ゆっくりは、鉄板に両側から押しつぶされ、 恨めしげに親を睨みながらくぐもった悲鳴を漏らしつづけている。 もはや数分もたないだろう。 「ゆぎゃぎゃぎゃびゃびゃびゃびゃびゃばばばばばばばばびびびびびびび」 「ゆ゛ー!ゆ゛ぅー!ゆ゛ううぅう!がはっ、かっ、げほっ、はっ………ゆ゛ぅうううううううううぅぅぅ!」 ひっきりなしに電流を流され続け、子れいむはもはや虫の息だ。 ぎりぎり生きてはいるようだが、すぐに死ぬだろう。 電流だけでは、ゆっくりはなかなか死なない。 前述のように餡子がなくならない限りは死なないわけで、 沸騰した餡子が体外に流れ出すか、 あるいは黒こげに燃えて破れた皮から餡子がこぼれ出すまで待つ必要がある。 流れている電流はすでに一万ボルト近くなっていた。 すでに沸騰しはじめているだろう。 マイクに向かって、母親の子れいむは必死に歌い続けている。 しかし、その声はすでにがらがらで、もともとひどい音程もリズムももはや完全になくなり、 ただマイクに向かってがなり立てるばかりだ。 それでも声量が相当落ちているのは、赤れいむに流れている電流を見ればわかる。 「ごーく……ごーく……ゆげぇ……ゆげぇぶ………ごーくぅ……」 「おみじゅしゃんはいっちぇきちゃだみぇえええ!!!」 「のみぇええ!!!ゆっきゅりしにゃいでもっちょにょみぇええええ!!!」 「ゆぁああああああしにたきゅにゃいいいいいいいいい!!!」 親れいむの姿は面白いことになっていた。 もともと大きかった50cm大の体が、水をためこんでだぶだぶに膨らんでいる。 身長はそう変わらないが、横幅は1メートル以上になってたっぷりテーブルの上に広がっていた。 三十分を超えたところで、ひっきりなしにしーしーをしはじめた。 飲んだはしから排出するようになったので、しーしー道をガムテープで塞いでやった。 そうしたら水っぽいうんうんをするようになり、半透明の液状の餡子があちこちにピーピーまき散らされた。 面白いのでしばらく見ていたが、結局あにゃるも塞いでおいた。 そうして今、親れいむはひたすら膨れているのだが、 すでに限界らしく、ねばつく全身を苦しげに上下させている。 さっきからずっとごぼごぼせき込んでおり、 飛び出さんばかりの眼の淵からひっきりなしに流れつづけている水は涙ばかりではないだろう。 ケースの中の赤まりさ共は、すでに水かさに押されて天井に頭を押し付けている。 帽子の中に水が入りはじめており、躍起になって親を叱咤していた。 「ゆぎゃあああああああおみじゅしゃんやべぢぇええええええええごぼごぼがぼ!!」 ついに一匹が、帽子ごとひっくり返って水の中に沈んでいった。 ごぼごぼと沈んでいく我が子を前に目を見開き、親れいむはさらに必死になって飲み始めた。 初めに死んだのは、電流を流されていた赤れいむだった。 沸騰した餡子が口と眼窩から飛び出し、ぽんっという音をたてて眼球が飛び、ケースの天井に当たった。 発火する前に電流を切ったのだが、死体からは焦げくさい煙が立ち上っていた。 次に、二匹の赤ゆっくりが鉄の板に押しつぶされて事切れた。 「もっぢょゆっぎゅっ」が断末魔だった。 死骸を飲み込んで隙間なくぴったり合わさった鉄板にも気付かず、 子れいむはそれからしばらくの間のろのろと跳ねていた。 それは歩くよりも、這いずるよりも遅い走りだった。 三番目に、親れいむが水を吐き出した。 ガムテープでふさがれた口は水を逃がさず、唯一の出口であるストローから盛大に水を逆流させた。 餡子の混じった水がガラスケースの中に大量に流し込まれ、 残っていた二匹の赤まりさは、たちまちのうちに水没した。 親れいむは涙を流しながら長いこと吐き続け、 流し込まれる水の勢いでケースの中の水が循環し、 二匹の赤まりさは餡子が溶け出すまで一個の死骸とともにぐるぐると攪拌された。 以外にも、一番最初の子れいむが最後まで残っていた。 涙やら涎やらに濡れそぼったその形相は仁王だか不動明王を思わせる迫力があり、 その体の激しい震えで、縄がぶらぶら揺れていた。 しかしやがて限界は訪れ、 ついには天井側の縄を離し、体ごと我が子の元に落ちていった。 記録は二時間四十三分。 驚いたことに、このれいむは縄を離したのではなく、噛んでいた部分の歯が根本から抜けおちていたのだった。 自らと鉄板の下に我が子を敷き、子れいむは泣きながらかすかに笑っていたようだった。 その笑いは決して幸福感からのものではあるまい。 「残念だったな」 れいむ共は元の自室、大きなガラス箱のある部屋に戻っていた。 体力を使いきってぐったりと横たわるれいむ共に、俺は声をかけてやる。 「でも、お前たちは精いっぱい頑張った。 あの子たちも許してくれるだろう。 お前たちは母親として胸を張っていいぞ。あの子たちは感謝しているはずだ」 れいむ共の答えはなかった。 俺は背を向け、部屋から出ていった。 「しねぇぇぇ……」 背後からかすかな呟きが聞こえてきた。 その夜、れいむ共が眠っているときにそれは起こった。 「づぶれびゅ!!づぶれびゅうううううう!!!」 真っ暗な部屋の中にあの声が轟いていた。 車輪の中で走り続けていたあの子れいむが飛びあがり、甲高い悲鳴をあげた。 「ゆあぎゃああああああああああああ!!!」 「のみぇ!!ゆっきゅりしにゃいでのみぇえええええーーーーっ」 「ががががああああばばばばばばばばうばばばばばびびびびびび」 「ゆっぎゅりでぎじゃいいいいいいいいいぃぃ!!!」 「ゆびぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」 れいむ共全員が、恐怖に身をひきつらせて叫んだ。 昼間の、あの赤ゆっくり共の絶叫と断末魔が部屋中に轟いていた。 そして、あれ以来すっかり聞いていなかった絶叫。 「のりょいごろじでやりゅがらにゃあああああああああああああああああ!!!!」 今、暗い部屋の中で、かすかな照明に照らされ、 れいむ共の視界に浮かび上がっているそれは、赤ゆっくりのデスマスクだった。 あの日、母親を呪い続けながら溶けていった赤れいむと赤まりさ。 それだけではなかった。 鉄板に押しつぶされてぐしゃぐしゃになった赤ゆっくり共。 電流を流されて焼け焦げた赤れいむ。 水没してどろどろに溶けた三匹の赤まりさ。 昼間死んでいった九匹が新たに加わり、 十一匹のデスマスクが、ガラスケースの四方かられいむ共を睨みつけていた。 「なんじぇあじゅげだ!!なんじぇあじゅげだあああああああああああーーーーーーーーーーっ」 「ゆぎゃっ!!びゅっ、びぃいっ!!いぢゃいぢゃいぢゃいいいいい!!!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶうううううぶぎゅぎゅぎゅ」 「じぇっだいにじぇっだいにのりょいごろじでやりゅううううーーーーーーっ!!! じにぇ!!じにぇ!!じにぇ!!ぐりゅじんでじにぇええええええええええええ!!!」 「ゆぎゃびいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」 恐怖に目を見開き、れいむ共は絶叫しながらガラス箱の真ん中に身を寄せあってがたがたと震えた。 餡子を吐き出すのはすぐだった。 監視室で確認してからすぐに部屋に飛び込み、 すさまじい勢いでえずいているれいむ共の口をガムテープで塞ぐと、言ってやった。 「一体なにをそんなに怖がってるんだ?」 「ゆぅぐううううう!!むぐうううううううううぅぅぅ!!」 涙を流しながら必死に訴えてくるれいむ共に向かって、俺は空とぼけてみせた。 「俺には何も見えないし、何も聞こえないな。 怖い夢でも見たんじゃないか?じゃあな」 そのまま、吐けなくなったれいむ共を放置して俺は部屋を出ていった。 その晩、れいむ共は暗闇の中に取り残され、 デスマスクに囲まれて子供たちの絶叫を聞き続けていた。 以上に述べた方法で、 その日からは毎日、れいむ共自身に自らの手で子供を殺させた。 子供が生まれ、装置に設置されるたびにれいむ共は必死に耐えたが、 時間制限がないのだからいずれは死なせるしかなかった。 そして、赤ゆっくりが死ぬたびにその断末魔と死骸を保存し、 夜が訪れるたびにデスマスクと断末魔のコレクションは増えていった。 いまでは、れいむ共は毎晩ガムテープを口に張られて死ぬこともできず、 子供たちに囲まれながら、人間ならたやすく発狂しているであろう恐怖を味わい続けていた。 れいむ種に施した処置は、現在のところは以上だ。 続く
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それからというもの、来る日も来る日も赤ゆっくりを殺しつづけた。 生まれた赤ゆっくりを殺し、胎児を引きずり出して殺した。 眠っている間に薬物注射を行い、胎児を殺して死産させることもあった。 そのたびにれいむ共は喉も裂けよと悲鳴を奏で、 いまでは俺に対する口調も懇願調に統一されていた。 殺しつづける日々が一週間を数えたころ、 俺はある事実を確認した。 れいむ共が赤ゆっくりを隠している。 赤ゆっくりを奪い去られながら懇願しつづけるれいむ共の中、 一匹だけなにも言わず、ぷくうと膨れている子れいむがいた。 れいむ共の懇願も、その日は単調で芝居がかっており、 誰が見ても一目瞭然だった。 もっとも察する以前に、れいむ共の行動は監視カメラで逐一把握できている。 今回は、常時チェックしてくれている使用人が教えてくれた。 「何か隠してないか?」 びくり、と膨れているれいむが反応して後ずさりする。 他のゆっくりが途端に挙動不審になって飛び跳ねだした。 「ゆゆゆっ!!かくしてません!!なにもかくしてませんん!!」 「それよりあかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 「あかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 初日に失敗してから、なんの進歩もしていない。 とはいえ人間に置き換えたとしても、抗う術のない条件下、 無駄な努力とは知りつつあがこうとする気持ちはわからなくもない。 それとも本気で成功すると思っているのかもしれないが。 残念なのは、あまりに演技が下手すぎることだ。 園児でももう少しうまくやる。 「そうか」 俺は、あえて知らないふりをすることにした。 「ゆゆぅ!!そうです!!なにもいません!!」 「あかちゃんかえしてください!!おねがいします!!」 その日は通常通り、奪った赤ゆっくりを傷めつけて殺した。 わが子を殺されるたびに上がる親どもの悲鳴は、さすがに演技ではない。 一匹だけ、膨れている子れいむは、涙を流しながらも声をあげなかった。 子供が隠されているのを知りながら、俺は部屋を出ていった。 これは使えると考えたのだ。 こいつらに与える苦痛は、そろそろ次の段階に入ってもいいだろう。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっきゅりちちぇいっちぇね!!」 「ゆっきゅりちちぇいっちぇね!!」 俺が扉を閉めた直後、子供を隠していた子れいむが口を開けた。 口の中から出てきたのは、二匹の赤ゆっくり。 れいむ種とまりさ種が一匹ずつだった。 「ゆゆっ、おきゃーしゃんのおくちのなきゃ、ゆっきゅりできちゃよ!」 「あっちゃかかっちゃよ!!またいれちぇね!!」 「ゆっ……おちびちゃんたち、ゆっくりしてねええ!!」 四匹の成体れいむ共が赤ゆっくりを囲んで心からの笑みを浮かべる。 つい今しがたまで、目の前で子供を殺されていたれいむ共。 無事に済んでいる子供たちへの愛もひとしおだろう。 赤ゆっくり共は、親の口の中にいたため、 何が起きていたのかはわからないようだ。 親たちも、事実をひた隠しにしているらしい。 「おきゃあしゃんたち、ないちぇるの?ゆっくちちちぇいっちぇね!!」 「どうしちゃの?なにきゃあっちゃの?」 「ゆゆっ!なにもないよ!きにしないでゆっくりしていってね!!」 「おちびちゃんたち、だいじょうぶ?いたいところない?」 「どきょもいちゃくにゃいよ!!」 「ゆっきゅりできちぇるよ~♪」 「それじゃあ、ゆっくりできるおうたをうたおうね!!」 「ゆゆっ!うたっちぇ!!」 「おきゃあしゃんのおうちゃ、ゆっきゅりできりゅからだいしゅき~♪」 「ゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪」 成体れいむ四匹で、恐ろしい溺愛ぶりだった。 その姿を、俺は今ビデオカメラを通して見ていた。 見ながら、更なる苦痛を親共に与える構想を練る。 この愛をじっくり熟成していこう。 より濃い子殺しのために。 さらに一週間、殺し続ける日々を重ねた。 親れいむ共は同じ手口を重ね、必死でより多くの子供を助けようとしていたが、 最初の二匹以外の赤ゆっくり共は避けつつ、他の子は全て引きずり出した。 「なにもがぐじでまぜええええん!!ざわらだいでえええ!!」 「ゆぶ!ゆぶぶううう!ぶうううううう!!」 「また隠してるな。全部出せ」 ぱんぱんに膨らんだれいむの頬を、両側からかしわ手で挟み叩く。 「ゆぶびゅうううう!!」 「ゆぴゅっ!ゆ?おにーちゃんゆっきゅりできりゅひちょ?」 「ああああああおぢびじゃんにげでええええええ!!!」 ぼひゅ、と吐き出される赤ゆっくり共を片端から捕まえ、 その眼を爪楊枝でえぐり出す。 「ゆぎゃがああああああああああだいいいいいいいいいい!!!」 「あがぢゃああんんん!!あがぢゃああああんんん!!!」 その日も、あの二匹の赤ゆっくり以外は全て潰した。 一匹だけ箱の隅に引っこんで頬を膨らませている子れいむだけは、 毎回わざと気付かないふりをする。 ゆっくり共は、本気で俺をだませていると思っているだろう。 唯一残された子供である赤ゆっくり二匹に対する親れいむ共の溺愛は、 当然ながらますます濃くなり、わがまま放題に甘やかして育てていた。 「ゆっ!おきゃーしゃんしゅべりだいになっちぇね!!」 「わかったよ!ゆっくりすべってね!!」 「ゆゆぅ~♪ゆっきゅり~♪」 身重の体を苦労して斜めに傾ける子れいむの上を、 二匹の赤ゆっくりが滑っていく。 「もっちょ!もっちょ!」 「おなきゃしゅいちゃ!もっちょたべちゃい!!」 「ゆゆ、じゃあおかあさんのぶんをたべてね!」 「おかあさんのぶんもたべていいよ!」 「ゆっきゅりいただきまちゅ!!」 「む~ちゃ、む~ちゃ………ちあわちぇー!!」 れいむ共に毎日与えている、なけなしの餌。 四匹分にも足りないようなその餌を、 れいむ共は苦労して赤ゆっくりに分け与えていた。 甘やかされた赤ゆっくり共は、足りないと言ってはお代わりを要求し、 親れいむ共は自分の取り分を惜しげもなく与えた。 礼も言わず、当然のように赤ゆっくり共は食べ散らかし、 そんな二匹の姿を親れいむ共は文句も言わずに微笑んで眺めていた。 「ゆぅ~……ゆっくりしたおちびちゃんたちだね……」 「がんばっておちびちゃんたちだけはまもろうね……」 頃合いだ。 俺は準備にかかった。 ある日、俺はその部屋に入った。 親れいむ共がすぐに並び、壁を作って二匹の赤ゆっくりを隠す。 「おちびちゃんはゆっくりしないでかくれてね!!」 こちらにしてみれば丸聞こえなのだが、うまく隠しおおせているようだ。 「おねがいします!!あかちゃんはたすけてください!!」 なにか叫んでいるが無視する。 俺は箱に入れて連れてきた子ゆっくり共をその部屋に放した。 十匹近くいるゆっくり共は、れいむ種とまりさ種が入り混じっている。 「ゆゆっ!!ここはまりさのゆっくりぷれいすにするんだぜ!!」 「れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!!」 思い思いに勝手にわめき始める子ゆっくり共。 こいつらはこのれいむ共とは無関係で、人に慣れたゆっくりだった。 続いて、さまざまな遊具を運び込む。 ゆっくり用の滑り台、クッション、ブランコ、シーソー。 「ゆゆぅ!!とってもゆっくりできるよおぉ~~♪」 「はやくあそびたいんだぜぇ~~!!」 子ゆっくり共は興奮して飛び跳ねだす。 「思う存分遊んでいいぞ」 「ゆわぁ~い!!」 クッションで飛び跳ね、滑り台に上り、めいめい自由に遊び始めた。 一体何が起こったのかわからない様子で呆然としている親れいむ共の隙をつき、 赤ゆっくり二匹を口に含んでいた子れいむの頬にかしわ手を叩きつける。 「ゆぶぇっ!!」 「ゆあああああぁぁぁぁぁ!!!?」 大切に大切に育てていた二匹が、ついに白日のもとにさらされた。 絶望の叫びを上げ、親れいむ共は涙を流して懇願してきた。 「だずげでぐだざいいいいいいい!!おでがいじばずううううう!!」 「ごのごだぢだげは!!ごのごだぢだげはああああ!!!」 「ぼんどうにだいぜつな、ゆっぐりじだごだぢなんでずううううう!!!」 「ゆゆぅ~?おきゃあしゃん?」 「おにーちゃんはゆっきゅりできりゅひちょ?」 「おぢびぢゃあああああん!!!」 俺はそれきり、箱の中のれいむ共を無視して背を向け、 子ゆっくり共の面倒を見はじめた。 口から吐き出させられただけで、 赤ゆっくりには何も手を出す様子がない俺を見て、助けられたと勘違いしたらしい。 親れいむ共が涙ながらに感謝しはじめた。 「ありがどうございばずううううう!!」 「でいぶのあがじゃんだずげでぐれでありがどうううううう!!!」 「おきゃあしゃんどうちたの?」 それから、子ゆっくり共は思うさま遊び続けた。 仲間たちと遊具で楽しげに遊びまわる子ゆっくり共を、 強化ガラスの壁を通して、赤れいむと赤まりさは食い入るように見つめていた。 「ゆぅ~~……あのこちゃち、とっちぇもゆっきゅりしちぇるよ!」 「まりしゃもゆっきゅりしちゃいよ!!まりしゃもまぜちぇ!!」 ガラスに頬を押しつけて訴えてくる赤ゆっくり二匹は、しかし無視されつづけた。 一匹の子ゆっくりが空腹を訴えてくる。 「おにいさん、おなかがすいたよ!!あまあまたべたいよ!!」 「よし」 俺はすぐに大皿を出し、その上にプリンを沢山並べてやった。 「仲良く分けろよ」 「ゆっくりいぃ~!!いただきますうう!!」 「む~しゃ、む~しゃ!!しあわせえぇ~~!!」 「ゆゆぅうううう~~~~!!」 「たべちゃい!!たべちゃい!!まりしゃもたべちゃいいいい!!」 赤れいむと赤まりさが涎を飛び散らせて飛び跳ねる。 「おきゃあしゃん!!あのあみゃあみゃすっごくゆっきゅりしちぇるよ!!」 「きゃわいいれいみゅにもあのあみゃあみゃちょうだいね!!」 「まりしゃもあっちにつれちぇっちぇね!!」 振り返りもせずに、プリンを凝視したまま背中越しに親に命令する赤れいむ共。 「ゆゆぅ……」 要求してもいいものか、俺の顔色を窺う親れいむ。 俺は視線を合せなかった。 不穏な雰囲気を読み取ったのか、親れいむは赤ゆっくり共に言い渡した。 「ゆっ!だめだよ!!ゆっくりできないよ!!」 「どぼじでぇぇぇぇぇ!!?」 これまで一度も要求を拒否されたことがなかった赤れいむと赤まりさは、 今初めてたしなめられ、火がついたように抗議しだした。 「きゃわいいれいみゅがゆっきゅりしちゃいといっちぇるんだよぉぉぉ!!? なにいっちぇるのぉぉぉぉ!!!」 「にゃんでぇぇぇ!!? にゃんでまりしゃはあみゃあみゃちゃべらりぇないのぉぉぉぉ!!?」 おろおろと互いの顔を見合わせる子れいむ共だったが、 親れいむは毅然として言い放った。 「だめだよ!!あのおにいさんにつかまったらゆっくりできなくなるよ!! ゆっくりりかいして、ここでじっとしててね!!」 さすがにあれだけ子供を殺されたせいで、 親れいむの警戒心は十二分に育まれたようだ。 固い表情で赤れいむ共を諭す。 「どぼじでじょんなごじょいうどおぉぉぉぉ!!!?」 親の気遣いなど伝わるはずもなく、赤れいむ共が絶叫した。 赤れいむ共が羨ましげに見つめる中、子ゆっくり共はさらにゆっくりする。 「うまっ、うまっ、うっめまじうっめ!!これうっめ!ぱねぇ!!」 「む~しゃむ~しゃむ~しゃ、ししししあわしぇええええ~~~♪」 はちみつをたっぷりかけたホットケーキと、 大皿いっぱいのイチゴケーキをほおばりながら、子ゆっくり共は嬉しさに転げ回る。 「ようし、高い高いしてやるぞ」 俺はクリームでべたべたの子ゆっくり共を手に取り、 二匹ずつ上げ下げしてやった。 高い高いの大好きなゆっくり共にはこたえられない遊びだ。 「ゆゆぅぅ~~~~♪おそらをとんでるみたいぃ~~~~♪」 「とっっってもゆっくりしてるよぉぉぉぉ~~~~~♪」 子ゆっくり共は大いにはしゃぎ、 順番待ちの連中が飛び跳ねながら「はやく!はやく!」と催促している。 「おにいいいいちゃあああああんん!! れいみゅもたきゃいたきゃいしちぇぇえええええ!!」 「まりしゃもゆっきゅりしちゃいよぉおおおおおおおおお!!!」 赤れいむ共は泣き喚きながらガラスに体当たりを繰り返している。 「ゆゆぅ……おちびちゃんたち、がまんしてね!」 「ゆっ、そうだ!おかあさんとゆっくりできるおうたをうたおうね!!」 「ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪」 「うるちゃああああああい!!!」 赤まりさが叫んだ。 「まりしゃをゆっきゅりさしぇないおきゃーしゃんはだまれえええ!!」 「にゃんでれいみゅをいじめりゅのぉおおおお!!? れいみゅのこちょがきりゃいになっちゃのおおおおお!!!?」 「ゆゆ!そんなことないよ!! おかあさんたちはおちびちゃんたちがだいすきだよ!?」 「だったりゃしゃっしゃとあっちへちゅれてきぇえええ!!」 「だ、だめだよ!おにいさんはゆっくりできないんだよ!!」 「わけわきゃんないよぉおおおお!! まりしゃをゆっきゅりさしぇないくしょれいみゅどもはちねぇえええ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉおおおお!!?」 もはやお母さんではなく糞れいむ呼ばわりされた親れいむ共は、 涙を流しながら絶叫した。 「どぼじでわがっでぐれだいどおおおぉぉぉ!!? おにいざんにづがまっだらゆっぐりでぎないのぉおおおお!!」 「おにーしゃんたしゅけちぇぇええ!! こにょくしょれいみゅどもがまりしゃたちをいじめりゅううぅぅ!!」 「たすけちぇえええ!!たしゅけちぇえええ!!ゆっきゅりさしぇちぇぇぇぇ!!」 「おぢびじゃああああん!!ぞんだごどいわだいでえええええええ!!!」 親れいむ共は悲しみのあまりに突っ伏している。 幸福な家庭はすでになかった。 甘やかされきった赤れいむと赤まりさにとって、 ゆっくりさせてくれない母親に存在意義はないようだ。 さっきから無視しつづけている俺に向かって、母親から助けてくれと要求している。 「こっちに来たいか?」 そこで、俺は初めて話しかけた。 「ゆゆっ!!きゃわいいれいみゅをそっちにつれてっちぇにぇ!!」 「はやきゅしちぇにぇ!!ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「おにいざんにぞんなごどいっぢゃだべええええ!!」 「ゆっきゅりできにゃいおきゃあしゃんはちんでにぇ!!」 「ゆわああぁぁああん!!」 「こっちに来たら歓迎するよ。 ただし、お母さんが許してくれたらね」 「ゆゆ!?ほんちょう!?」 「本当だとも。 君たちはお母さんの大切な子供なんだから、勝手に連れてくることはできないな」 俺の言葉を聞き、赤れいむと赤まりさが母親のほうを向く。 「きいちゃ!?きゃんげいしちぇくれりゅっていっちぇるよ!!」 「おきゃあしゃんははやきゅゆるしちぇにぇ!!」 胸を張って命令する二匹。 「だべえええええ!!いっぢゃだべえええええ!!」 「ゆっぐりでぎないよおおおおお!!」 「ゆぎぃいいいいいいいい!!!?」 「にゃにいっちぇりゅのおおおおおお!!? ゆっきゅりできにゃいよおおおおおお!!!」 互いに同じ事を言い合い怒鳴り合う親子に、俺は念を押す。 「お母さんが許してくれたら、いつでも来ていいよ。 みんなと一緒に、たっぷりゆっくりしようね!」 「ほらああああああああ!!!ゆっきゅりしちゃいいいいいいいい!!!」 「ゆっきゅりさしぇりょおおおおおお!!!」 「だべなのおおおおおお!!わがっでよおおおおおお!!!」 たっぷり二時間、赤ゆっくり二匹は泣き喚いた。 「ゆっぎゅりじぢゃいいいいいいいい!!!ゆわぁぁああああん!!!」 「いえええええええええ!!!!ゆっぎゅりじでいいっでいえええええええ!!! ぐぞれいみゅどもおおおおおおおおおおおおーーー!!!」 「ごんにゃのおがあじゃんじゃないいいいいいいい!! おがあじゃんはゆっぎゅりざじぇでぐれりゅううううううう!!!」 涙と涎としーしーを撒き散らしながら床を転げ回る赤れいむ、 憎悪と殺意をあらわにして母親に噛みつく赤まりさ。 親れいむ共はほとほと疲れきっていた。 宥め、怒り、聡し、乞い、どれだけ言っても赤ゆっくり共は耳を貸さなかった。 悲しげに目を伏せ、黙って子供たちの叫び声を聞きながらしゃくりあげている。 あれほど可愛がっていた子供にここまで憎まれるのはやはり耐えられないのだろう。 本来、普通のゆっくりならば、 ここまでわがまま放題を言われれば愛想をつかして捨てるだろう。 しかし、何度も何度もさんざん子供を殺され続け、 ようやく守り通したたった二匹の、念願の子供たちだった。 愛想をつかすなんて考えられない、大事な大事な可愛い子供たちなのだ。 親れいむの執着は想像もできないものだろう。 「ゆゆっ?このれいむたちどうしたの?ゆっくりしてないよ?」 こちら側の子ゆっくりが、数匹不思議そうにガラス箱の中を覗いている。 俺は教えてやった。 「あのおちびちゃん達が君たちとゆっくりしたがってるんだけど、 お母さんが行かせてくれないんだよ」 「ゆゆっ、そんなのひどいよ!!ゆっくりできないよ!!」 「あかちゃんこっちにこさせてあげてね!!」 「みんな、あのおちびちゃんがこっちに来たら仲良くしてくれるかな?」 「もちろんだよ!!あかちゃんかわいいね!!」 「いっしょにゆっくりしようね!!」 「するううぅ!!ゆっくりしたいいいいいい!!」 赤れいむと赤まりさがガラス壁に頬を押しつけて叫んだ。 向こう側の子ゆっくりと、ガラス越しにすーりすーりをし始める赤れいむ。 「ゆぅ……ゆぅぅぅ……」 親れいむ共はたしかに揺れていた。 ほとほと疲れていたことに加えて、期待のほうが膨らみはじめていた。 もしかしたらお兄さんは許してくれたのではないか。 これほどゆっくりした子たち、優しい言葉。 お兄さんは「大切な子供」だと言ってくれた。 今までの愚行を反省して、ようやく自分たちをゆっくりさせる気になったのだろうか。 子供をゆっくりさせてあげたい。 たっぷりゆっくりさせて喜ばせ、またお母さんと慕ってほしい。 れいむ共の心情はそんなところだろう、くっきりと顔に浮かんでいた。 その時、赤まりさが母親たちのところに這いずっていって言った。 「ほんちょのおきゃあしゃんにあわせちぇにぇ」 「ゆっ……おちびちゃあああああん!!? れいむがおちびちゃんのおかあさんなのよおおおおお!!」 「うちょいわにゃいでにぇ。 おきゃあしゃんならゆっきゅりさしぇちぇくりぇるよ。 おまえちゃちがにしぇもにょなにょはよきゅわかっちゃよ。 いいきゃら、はやきゅほんちょのおきゃあしゃんにあわしぇちぇ」 「ぞ、ぞんにゃごど………いわだいでぇ……おでがいだがらぁ……」 「おにぇがいだきゃら、まりしゃをゆっきゅりさしぇちぇくれりゅ、 ほんちょのおきゃあしゃんにあわしぇちぇにぇ。 まりしゃ、しゃびちいよ」 赤まりさの視線は、よそよそしく冷たかった。 その眼が見ているものは、もはや母親ではなく、 母親のふりをした得体の知れない別のなにかだった。 「ゆぅうううううう!!ゆぅうううううう!!!」 目をぎゅっとつぶり、声を押し殺して泣く親れいむ共。 限界が来ているのがわかった。 「ゆっぐりざぜであげでねええええええ!!!」 ついに、あの子れいむが叫んだ。 いつも二匹を口に含んで守っていた子れいむだった。 「ゆっ、ゆっぐりざぜであげでぇええええ!!」 「おぢびじゃんおでがいじばずぅううううう!!」 全員が堰を切ったように叫び始める。 「本当にいいのかい?」 俺は念を押した。 「この子たちをゆっくりさせてあげられるなんて嬉しいけど、 本当に僕に、この子たちを預けてくれるのかい?」 「ばいいいぃぃ……ひっぐ、うっぐ……ゆっぐり、ざぜであげで……」 「おぢびぢゃんだぢ……たっぷり、ゆっぐりじでいいがらね……」 「大切な子供たちなんだろう?そばに置いておきたくないかい? いまならまだ取り消せるよ?」 「どりげざないよ……ばやぐ、ゆっぐりざぜであげでね……」 「考えなおすなら今だよ? 今考えなおせば、この子は、お母さんのそばにいられるんだけど」 「ゆっぐ……ぞ、ぞれより……ぞっぢでゆっぐりざぜであげでぇ…」 「わかった」 俺は二匹の赤ゆっくりをそっと手に取り、箱から取り出した。 「ゆゆぅ~♪おしょらをちょんでるみちゃいぃ~~!!」 きらきらと目を輝かせる赤れいむと赤まりさ。 親れいむ共が目を潤ませ、微笑みながら見送る。 「おちびちゃんたち……たっぷり、たっぷりゆっくりするんだよ…… れいむがおかあさんだからね……ゆっくりしていってねぇ……」 「よし、では始めよう」 言うが早いか、俺は子ゆっくり共を籠に詰めると、 遊具や食べ物と一緒に、カートに載せてさっさと部屋から出してしまう。 残ったのは二匹の赤れいむと赤まりさだけだった。 「ゆっ?」 そして、部屋の外から俺は新しい箱を持ってくると、 赤ゆっくり共の目の前に中身を広げた。 親れいむ共の顔色がみるみるうちに青ざめる。 「おぢびぢゃんにげでえええええええええええええええええ!!!!!」 続く
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書きたかった事 本スレ91の 220さんの書き込み 『ゆっくりが物覚え悪いのは都合の悪い記憶を餡子と一緒に吐くからという設定があったよな。』 からインスパイアされて 若干汚いのが注意点、嘔吐物的な意味で 作者 チェンマガツ? 男はその手にゆっくりれいむを抱いている。 成体サイズのそれは近くの森で甘い言葉で誘って着いてきた普通の野良れいむだ。 男の家にはすでにゆっくりまりさが居るのだがそろそろ番となるゆっくりも欲しかろうと思い拾ってきたのだ。 わざわざゆっくり屋で買うのも馬鹿らしい。 気に入らなければ潰して、まりさには別のれいむをあてがえばいいのだ。 そんな男の考えを知らないれいむはといえばご機嫌上々である。 一度だけだが森の中で出会った人間さんから舌がとろけそうなほど美味しい食べ物をもらったことがあった。 その思い出だけで人間への警戒感は全くない。その上かっこいいまりさと会えるというのだ。 これ以上幸せな状況は無い、というわけだ。 「ただいまー」 「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい!!」 帰宅すると玄関まで飼いまりさが跳ねてきてきっちりと挨拶をした。 お兄さんはかなり厳しい性格でこれまた野良であったまりさを一から叩き直して立派な飼いまりさに仕上げていた。 「ゆゆっ、おにいさんそのれいむどうしたんだぜ」 「ああ、お前もそろそろ番になりたいだろうと思って連れてきてやったんだ」 そう言ってまりさの目の前にれいむを降ろしてやる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「まりさはまりさだぜ」 「れいむはれいむだよ!!」 「れいむはゆっくりできるれいむだぜ?」 「とてもゆっくりできるよ!!」 「それならおにいさんのおうちでゆっくりするといいぜ」 「う、うん……。まりさのおうちじゃないの?」 「だめだぜれいむ、ここはおにいさんのおうちだぜ。まりさはここでゆっくりさせてもらってるんだぜ」 「れいむもゆっくりできるの?」 「れいむもちゃんとゆっくりさせてやるさ。その代わりちゃんと言う事聞いて貰うぞ」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいしたよ!! れいむもゆっくりするよ!!」 「よし。まりさ、れいむを部屋に案内してやれ」 「ゆっくりわかったよおにいさん!! れいむこっちにくるんだぜ」 「ゆゆ!!」 玄関先で一通りの自己紹介を済ませたまりさとれいむは部屋の奥へと消えていった。 まりさとの会話からもそれほど性根悪いれいむでなさそうなので男はこのまま様子を見る事にした。 まりさの為に用意された部屋は上下に分かれた押し入れの下段だった。 それでも並のゆっくりには十分すぎるほどのスペースである。 れいむはもちろんそこが押し入れと理解するわけがないのでまりさはとても広い巣を持っているゆっくりだと思った。 巣の広さもゆっくりのステータスの一つであるためれいむがまりさを気に入るのは早かった。 「まりさのすはとってもひろくてゆっくりできるね!!」 「ゆゆ~ん、あんまりほめるんじゃないぜ」 さらに飼いゆっくりであれば当然食事面で野生のゆっくりと差がついている。 まりさ本人もゆっくりからしたら美ゆっくりの部類に入るわけでれいむはその点でもまりさをお気に召したようだ。 逆にまりさの方は正直別のゆっくりならなんでもよかった、今は後悔してない状態である。 程良い関係であるならこれからの生活に支障はない、男はそう思った。 「もうお昼だしご飯にしようか」 「れいむにごはんはやくちょうだいね!!」 「れいむ、ゆっくりまってたらおにいさんはもってきてくれるんだぜ」 「ゆゆっ!! まりさはすごいんだね!!」 「それはちがうぜれいむ……」 まりさの実にまずそうな表情を男は読み取る。 れいむはまりさの言葉をまりさの為に男がご飯を持ってきてくれていると完全に誤解している。 まりさが伝えたかったのはご飯を催促することなく大人しくしていたらようやくご飯をもらえるということだ。 男は所詮野生のゆっくりだと思って甘くみたがまりさからすれば冷や汗ですむ話ではない。 「れいむ、うちでは静かにしている奴にゆっくりできるご飯を持ってくることにしている、わかったか?」 「どうしてそんなこというの? さっさとごはんもってきてね!!」 「まあそのうち分かるよ」 意味深な言葉を残して男は去っていった。れいむはそんなことは一切気にしなかった。 その後男は二匹に同じ量、同じ見た目のご飯を持ってきてまた部屋をあとにした。 二匹がご飯を食べている間にれいむを洗う準備をするためだ。 これから一緒に暮らすためにはあまりに汚らしい肌やリボンでは都合が悪いのだ。 ぬるま湯にボディーソープを入れてよく掻き混ぜると即席泡風呂が完成した。 そのころ押し入れの二匹は仲良くご飯を食べていた。 まりさはゆっくりらしいがつがつ食べるスタイルをとうに捨て去り、器から舌で少しずつ巻き取りながら綺麗に食べている。 一方のれいむは見事にご飯を食べ散らかしていた。 飼い慣らされたまりさから見れば卒倒物である。最近では忘れていた男の怒声が飛んでくるのが目に見えて震え上がった。 「れいむ、ごはんはきれいにたべるんだぜ。すのなかもきれいにしないとだめだぜ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪ なにかいったまりさ?」 「いや、なんでもないぜ……」 まりさは一応忠告はしたとばかりにれいむの食べ様に知らない振りを決め込む。 そして男が戻ってくると案の定れいむに雷が落ちる。 と思われたが男の意外な反応にまりさは驚くこととなる。 「れいむ、ごはんをたべるときはきれいにな。すがきたなくなってるぞ」 「ゆゆっ、れいむのせいじゃないよ!!」 「きれいにしないとゆっくりできなくなるぞ?」 「れいむはしらないっていってるでしょ!?」 「そうかまあいい。れいむおいでお前を綺麗にしてやろう」 「ほんとう!? ゆっくりはやくつれてってね!!」 「はいはい」 まりさの開いた口がふさがらない。何故だ、自分の時はあんなに優しくされた覚えはないのだがといったところだろう。 れいむを担いで男が向かったのはれいむを洗う準備をした風呂場である。 水面を直接見せることなく洗う事の出来る泡風呂はじつに便利だと男は常々思う。 ゆっくりがどうしてこうも水に対して恐怖心を抱いているか男は全く理解していないからだ。 最初にまりさを洗おうとしたときの騒動は今でも忘れられないほどの惨事となった。 「あわあわさんがとてもゆっくりできるね」 「そうだな」 男はれいむとの会話に適当に相槌を打ちながら細部まで綺麗に磨きあげていく。 飾りを外すのは拒まれたのでしかたなく頭に付けたままごしごしと洗う。 れいむの顔はマッサージをするように洗うと、見た目が気持ち悪い気持ちよさそうな表情をした。 風呂上がりにドライヤーも厳禁であることも経験済みだ。最初はあの音がゆっくりできないらしい。まりさは今では逆に病みつきらしいが。 面倒だがタオルできちんとれいむの水分を拭き取ることにした。 風呂場を出た頃にはれいむもそこいらの飼いゆっくりのような綺麗な肌になっていた。 田舎娘でもきちんと化粧とおしゃれな洋服を着せれば都会っ子なのだ。 まりさの待つ押し入れにれいむを戻すとまりさのれいむを見る目が変わった。 れいむがまりさに抱いていた思いに概ね近づいたようだ。つまりは相思相愛だ。 薄汚いれいむに何の感情も抱かなかったまりさもなかなか現金な奴である。 家にれいむが来てまだ一度もしていなかったすーりすーりを急にし始めたところからもわかる。れいむも満更ではないようだ。 「この様子なら心配はないな」 そんなまりさ達の行動におとこは苦笑いをしながら水受けに新しくボトルから水を注ぎ部屋を出て行った。 その日は男は晩ご飯と水の補給をしてあとはゆっくり達に関与しなかった。 今まではまりさの相手をしてやる必要があったがこれからはそれをれいむに任せればいいのだ。 れいむの躾けに関してもまりさの行動を見ているうちにれいむがそれを真似するようになるだろうと考えた。 その考えをしらないまりさは男の怒りがいつれいむに向かうか恐ろしくて仕方がなかった。 これまでの経験からすればもうすでに激しい暴行があってもおかしくないからだ。 今度れいむが粗相を起こせばなんとしてもれいむを庇わなくてはならない。 綺麗になったれいむにまりさの思いはそれほどにまで募っていたのだ。 しかし就寝直前に事件は発生した。 「ばでぃざ……うっぷ、ぎもぢわるぃおろろろろろろろろ」 「ゆぎゃあああああでいぶどうじだのおおおお!!」 れいむが突然餡子を嘔吐したのだ。 れいむは生粋の野生生まれ野生育ちだった。 その為実に人工物に対しての耐性がこれでもかというほどなかったのだ。 男が餌に混ぜていた少量の塩やカルシウムに。体を洗ったときに口に入れたあわあわこと洗剤に。そして水分補給に飲んだ硬水のミネラルウォーターに。 すべてがれいむの体調を崩す元となりついに嘔吐してしまったのだ。 だがまりさはれいむの体調の心配はまったく気にしてなかった。 またれいむが部屋を汚したのだ。 今度こそ男に見つかったられいむは潰されてしまいかねない。こんな美ゆっくりのれいむがいなくなるのはまりさは勘弁ならなかった。 そこでまりさが取った咄嗟の行動はれいむの嘔吐物を食べて証拠隠滅することだった。 基本的にゆっくりの体から出た餡子はそのゆっくりにとって汚いものである。 しかし背に腹は代えられないとばかりにれいむの嘔吐物を一気食いする。 ちびちび食べてはこちらも貰いゲロしてしまいかねないというまりさの判断だ。 「どうしたまりさ。悲鳴したような気がしたが」 なんとかれいむのものを食べ終えた頃男が押し入れの様子を覗きに来た。 「なんでもないよおにいさん!! ゆっくりおやすみなさい!!」 「ああ、おやすみ」 不審そうな表情で男は襖を閉めて、さっさと寝るために自室に戻っていった。 なんとか誤魔化せたまりさは安堵の溜め息をつく。ふとれいむのほうを見ると気を失うように眠りについてしまったようである。 その様子をみてまりさをれいむに頬擦りをして自分も眠りにつくことにした。 れいむがまりさの所にやってきて二日目の朝がやってきた。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 「れいむはおねぼうさんだね!! きのうれいむはまりさのところにおにいさんときたんだぜ」 そんなれいむの姿を見て微笑んでいたまりさの表情が次の瞬間凍り付く。 「まりさはだれなの!? れいむにゆっくりちかよらないでね!! れいむおうちにかえる!!」 「どうしたのれいむ!! まりさはまりさだよ、わすれたの?」 「れいむはまりさのことなんてしらないよ!! ゆえーん、でぐちはどこなのー!!」 一体全体れいむはどうしてしまったのだろう。昨日あんなに仲良くなったのにすーりすーりしたのにそれも忘れてしまったのか。 「おにいさんもわすれたの? ごはんをもってきてくれたにんげんさんだよ?」 するとれいむの目が変わった。まりさはようやく思い出してくれたのだと安心した。 「すごいねまりさ!! まりさはにんげんさんよりえらいんだね!!」 しかしれいむの発した言葉は昨日の焼き直しのようだった。 「ちがうんだぜれいむ……」 昨日晩ご飯のときに説明していたことも忘れたのだろうか。もしかすると理解できてなかったのかもしれないそうまりさは思う事にした。 それからすぐ男が朝ご飯を持ってきて水の補給をして、挨拶をしただけであまり会話もすることなく出て行った。 汚らしくご飯を食べたれいむをまりさは注意して、すーりすーりしたりかけっこしたり男とゆっくりとの関係について話をして昼ご飯がきた。 朝同様男はすぐに出て行った。これからは男とではなくてれいむと仲良くするんだとまりさは言われた。まりさはれいむにこの家でのルールを教えていった。そのうちに晩ご飯がきた。 水の補給も終え部屋を出て行こうとする男にまりさとれいむは仲良くおやすみなさいと言った。 男は満面の笑みでそれに返して部屋を後にした。 そして就寝直前れいむは再び嘔吐をした。 体に合わないサプリメントと硬水中のミネラルの影響によるものである。 まりさも再びそれを何とか口にする。 出来れば食べたくないのだが男に知られるわけにはいかないため、食べる以外に処分方法がないのだ。 そして三日目の朝が来た。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!」 いつも通りの時間に目覚めたまりさはまだ眠っているれいむに向かって朝の挨拶をする。 「ここはどこなの!? れいむはどうしてこんなところにいるの!!」 れいむは昨日と全く同じ台詞を吐いた。 あとがき 記憶継承な話題になってたけど忘れるのも面白そうかなと思ってみた。 嘔吐した餡子を食べると記憶継承するのはあくまでも同種のゆっくりでそれ以外は餡子に消化しちゃうんじゃないかと。 ありすのカスタードをれいむが食べても駄目そうな雰囲気で。 れいむとまりさの餡子も似ているようで少し違うんだよきっと。 というのは勝手な妄想なのでさらっと流してください(・3・)~♪
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『ヒヨドリの幸せ 上』 26KB 制裁 日常模様 飼いゆ 現代 愛護人間 上編です ※※CAUTION※※ 読後感の良さは保証しかねます ヒヨドリの幸せ 上 「あー、クソ疲れた」 仕事から帰った俺は、こきりと一つ肩を鳴らして階段を上り、晩秋の日差しに目を 細めながら、アパートの二階にある自宅の鍵を開けた。 俺の住んでいる安アパートは、ペット、ゆっくり可な事が唯一の取り柄だ。 駅は遠いし最寄りのコンビニまで徒歩20分。壁はある程度しっかりしてるけれど、 真向かいにビルがあるせいで、日当たりも悪い。でも、良いのだ。 ネクタイを外しながら、玄関の扉を開けた。そう、このアパートはペット、ゆっくり可。 飼いゆっくりのれいむを溺愛している、独身で一人暮らしの俺にとって、れいむを飼える というのが家選びの唯一絶対の基準。他なんてどうとでもなる。だから、俺にとってこの アパートは、たまらなく魅力的な素晴らしい物件なのだった。 「ただいま、れいむ」 奥の部屋にいるはずのれいむに向かって声をかけてから、スーツを脱ぐ。 しかし、何かが変だ。いつもなら、俺が扉を開ければすぐに玄関までやってきて 俺に飛びついてくるはずなのに、今日はおかえりの言葉も無い。 寝ているのか?そう思いながら部屋に入ると、れいむはそこに居た。 畳敷きの部屋の真ん中で、れいむが俺に背を向けている。夕陽に照らされたその後ろ姿は、 俺がこれまで見た事の無い雰囲気を纏っていた。 どこか侵しがたいような、張り詰めた空気。それは俺には、とても嫌な物に見えた。 おかしい。何かがおかしい。俺はもう一度れいむに声をかけた。 「れい・・・・・・む?」 「あ・・・・・・。おかえりなさい、おにいさん」 今俺に気付いた、という風にれいむが振り返り、俺に向かって微笑んでくれた。でも、 その笑顔は、いつもとは全然違った。いつもはこんな、内心を押し隠そうとするような 悲しそうな笑い方はしない。昨日まではもっと、天真爛漫に、「ゆっくりとした」笑顔を 浮かべていたはずだ。 「なぁ、れいむ。どうしたんだ?どこか具合が悪いのか?心配ごとでもあるのか?」 俺はれいむの前に回り、れいむの瞳を覗きこんだ。いつもニコニコと幸せそうに笑っていた はずのその瞳は、今日は物憂げに伏せられている。 「あ、そうか!何処か怪我をしたのか?」 赤ゆっくりの頃から飼っているれいむは、やっと成体サイズに成長したばかり。 昨日はそのお祝いに、これまで室内飼いだったれいむを、初めて公園に連れて行って やり、思い切り跳ねまわらせてやったのだ。 「うぅん・・・・・・。ちがうよおにいさん。れいむ、べつにけがなんてしてないよ」 そう言ってれいむは、ころんと腹を見せて転がり、あんよを俺に見せてくれる。 確かにそこに、傷なんてついていない。いつも通りぴかぴかのあんよだった。 「じゃあ、どうしたって言うんだ・・・・・・?何でそんなに悲しそうな顔をしてるんだよれいむ。 お前がそんな顔してたら、俺の方が悲しくなっちまうよ」 「あ、ごめんねおにいさん。れいむがゆっくりしてないとおにいさんもゆっくりできないよね」 転がったまま、れいむが困ったように笑う。俺をゆっくりさせてくれようとしているのだろうが、 そのいかにも無理をして浮かべた笑みは、かえって俺の心を抉った。 「本当、どうしたんだよれいむ。何があったんだよ」 俺はれいむを抱え上げ、正面からその眼を見つめた。 「何かあったんなら、言ってくれよ。寂しかったのか?それとも俺が何かやっちゃったか? 飯が不味かったのか?あ、それとも逆にお前が何か悪い事したとかか?何か物を 壊したとか。大丈夫。そんなので俺は怒らないよ」 怒涛のように口をついて出る言葉の奔流。れいむはしばらく黙って俺の言葉を聞きながら、 何か言いたげにしては口をつぐむ、という事をくり返していたが、決意したように 俺の眼を見つめると、縋るように話し始めた。 「おにいさん」 「何だ?」 「あのね、おねがいがあるの」 「何でも言ってくれ」 「いいの?」 「れいむが笑ってくれるなら、俺は何でもしてやるよ」 「ありがとう、おにいさん」 れいむは泣き笑いのような表情を浮かべると、 「おさんぽにつれていって」 そう言った。 れいむは昨日行った自然公園に行きたいらしい。もうすぐ日も落ちてしまう時間であるし、 ゆっくりの足で公園まで往復するのは時間がかかりすぎる。なので、俺は普段着に着替え、 れいむを自転車の前かごに乗せて、公園まで移動することにした。 「何だよれいむ。公園ぐらい、言えばいつでも連れていってやるのに。本当にお前は 良い子だなぁ。もっと我儘言ってくれてもいいんだぜ?」 上機嫌に自転車を漕ぎながら、俺はれいむに話しかける。公園に行きたいなんて 些細な要求を言い出せないなんて、れいむは本当に優しくて可愛い。 「~~~っ~」 れいむが何か言った気がした。しかし、前籠に乗っているれいむの表情は見えないし、 自分より前に居る人間が前を向いて喋る声というのは、そもそも聞きとり辛い。れいむが 言った言葉が、俺にはよく聞き取れなかった。しかし、その声は心なしか沈んでいた ように思える。 今日、れいむの様子が違ったのは、我儘を言いだせなかったからじゃないのか・・・・・・? れいむにもう一度声をかけようとして、一瞬前方への注意が逸れた瞬間。自転車の前に 何かが飛び出してきた。 「うわっ危ねぇ!!」 俺は慌ててハンドルを切り、飛び出してきたソレ・・・・・・野良ゆっくりを回避しようとする。 急にハンドルを切った自転車は急停止する。しかし自転車は長く、野良ゆっくりが一跳ね する距離は、意外と長かった。 「ゆひいいいいぃぃぃぃぃ!!!いぢゃいいいぃぃぃぃ!!」 べちん、と前輪にぶつかった野良ゆっくりのまりさはべちゃりと地面に貼りつき、 しーしーをだだ漏れにして、情けない声で泣きはじめた。 「飛び出してくんな馬鹿!」 俺はまりさを怒鳴りつけると、自転車のハンドルを真っ直ぐに戻し、走り始めた。 ここらへん、野良ゆっくり増えたよな・・・・・・。 ペダルを漕ぎながら考えていると、またしても、前かられいむの声がしたような気がした。 「よしよし、怖かったか?どこかぶつけちゃったか?ごめんな、もうすぐ着くからな」 さっき急停止した事についてだろう。そう考えて、俺は左手で前籠の中に居るれいむの 頭を撫でてやった。 あと数分で、公園に到着するだろう。 「おにいさん、さっきのまりさはだいじょうぶだった?」 公園に着いて前かごかられいむを降ろしてやった後。れいむが一番最初に俺に言った言葉 はそれだった。 「あぁ、良く見て無かったけど、前輪にぶつかっただけだし、大した怪我はしてないだろ」 俺はれいむを安心させるように言ってやる。 「見ず知らずの野良を気にしてやるなんて、れいむは優しいな」 「ちがうよ・・・・・・」 れいむがうつむき、何かを呟く。その言葉は小さくて、俺には聞き取れなかった。 「れいむ?」 やはり、まだ様子がおかしい。問い詰めようとした時、れいむが顔を上げて言った。 「なんでもないよ・・・・・・。おにいさん、おさんぽしようね」 その顔は、楽しく遊ぼうとするような、そんな顔じゃなかった。 大きな自然公園を、れいむと一緒にぶらぶらと歩く。 れいむはきょろきょろと周りを見渡しながら、ゆっくりと歩いている。釣られて俺も周りを 見渡すと、そこには前だけを見て歩いている時には気付かない、様々な物や、動物、 そして、たくさんのゆっくりがいた。 日が落ちる寸前の薄暗闇。その至る所に、溶けるように、リボンの赤や金髪が紛れ、 蠢いていた。 足元を見下ろすと、そこには俺の飼いゆっくりのれいむがいる。真紅に白抜きの入った リボンが、薄暗い中でもばっちりと映え、存在感を主張している。 しかし、れいむのように人間に庇護されない野良ゆっくりに、装飾品を綺麗に保っておく 術などは無い。薄汚れ、くすんだリボンや髪は、俺の目に野良ゆっくりたちを、背景と半ば 一体化した、曖昧な物に見せていた。それはあたかも、来る夜に飲み込まれ、 噛み砕かれたかのように。 何故野良ゆっくりというのは、あんなに惨めに見えるんだろう。猫やカラスのように、 街に生きる動物はたくさんいて、そいつらの事を見ても、「惨めだ」なんて思わないのに。 つらつらと考えながら歩いていると、れいむが話しかけてきた。 「ねぇ、おにいさん」 「ん?」 「れいむたちのまわりにいっぱいゆっくりがいるの、わかる?」 「あぁ、野良のゆっくりがいっぱいいるな」 「みんなぜんぜんゆっくりしてないよ」 「そうだな。あいつら汚ねーしな。野良ゆっくりは食べもの集めるのも大変らしいし、 ゆっくりはしてないかもな。でも、野良ゆっくりが増えたら街が汚くなるし」 「どぼじでぞんなごどいうの!?」 俺の台詞を遮って、れいむが叫んだ。驚いてれいむを見ると、れいむは俺を、 涙を溜めた眼で見上げ・・・・・・いや、睨みつけていた。 「おんなじゆっくりなんだよ!?れいむとほかのゆっぐりとなにがちがうの!? どうじでれいむはゆっくりしてるのに、ほかのゆっくりはゆっくりできないの!?」 叫び終わると、れいむは言いすぎた、という風に口をつぐみ、 「ご、ごめんね・・・・・・。おにいさんにおこってるんじゃないんだよ、ごめんね」 そう言って、申し訳なさそうに謝ってきた。 これか。れいむの憂鬱の原因は、これなのか。 昨日の散歩。れいむはそこで、野良ゆっくりを初めて見たんだろう。そして、その 「ゆっくりしていなさ」に衝撃を受けた。そりゃぁ、俺たち人間にとっては野良のゆっくりが 地面を這いずっているのは見慣れた光景だし、気に留めるような事でもない。 でも、れいむにとっては。優しいれいむには、自分と同じゆっくりが、自分と全く違う、 極めて過酷な場所に生きている事が、ショックだったんだ。 まずい。この流れはまずい。何でも良い、何か言わないと。そう思って喋ろうとするが、 言葉が出てこない。 「あのな、れいむ」 「おにいさん!」 捻りだそうとした言葉の先を、れいむに遮られた。 「ゆっくりできないゆっくりたちを、たすけてあげてほしいよ!!」 言われてしまった。あぁ、クソ。 れいむの言う「助ける」というのがどの程度までを指すのかは分からない。しかし、 れいむが見ている範囲の野良ゆっくりたちを、れいむから見て「ゆっくりできる」ように してやるなんて、およそ現実的じゃない。どれだけの手間暇がかかると思ってるんだ? そんなことは不可能だし、もし可能だとしても、正直に言って、そんなことしたくもない。 潤んだ瞳で哀願して来るれいむ。その真摯な瞳に見つめられて、心がズキリと痛む。 しかし、れいむには悪いが、その願いを聞いてやる事はできない。 「えぇと・・・・・・、あのなれいむ。そうだ、何かあまあま食うか?買ってやるよ」 何とか丸めこまなくては。そう思った俺は、舌が肥えるのでめったに食わせない あまあまをダシにして、れいむの興味を逸らそうとした。 「のらゆっくりは、あまあまをたべられるの?」 駄目だった。れいむは悲しそうな、そして必死な眼で縋るように俺を見ている。 「おにいさん、おねがいだよ。みんながゆっくりできないと、れいむもゆっくりできないよ。 おにいさんはみんなをたすけてあげられるでしょ?」 俺の足に体をすりつけながら、れいむは俺を見上げる。あぁ、これは真面目に答えないと まずいんだな。遅まきながらそう思った俺は、無言でれいむを持ちあげ、近くのベンチに 座った。膝の上にれいむを抱え、眼を覗きこんで喋りはじめた。 「なぁれいむ。お前は飼いゆっくり、人間に護ってもらえるゆっくりなんだ。その、 何と言うかな、あいつらとは違うんだよ」 「じゃあ、みんなを『かいゆっくり』にしてあげてほしいよ」 「そんなの無理だ。俺にはれいむしか飼えないんだ。分かってくれよ」 「どうして?れいむとみんなと、なにがちがうの?おんなじゆっくりなんだよ」 そうだ。れいむの言うとおりだ。野良猫と飼い猫は、両方猫だ。しかし・・・・・・ 「あのな、れいむ。確かにお前と他のゆっくりは同じかもしれない。でも、ひとつだけ 違う事がある。それは運だ。ゆっくりが幸せになれるかどうかは、最初から決まって いる。お前はそれに選ばれたんだ」 「じゃあ、れいむはみんなに『うん』をわけてあげるよ!れいむだけがしあわせー!に なるのはずるいよ!ひとりじめはゆっくりできないんだよ!?」 優しい優しい俺のれいむ。お前は偉いな。でも、それは。 「あのな、れいむ。お前が持っている運っていうのは、『俺にしあわせーにしてもらえる』 っていうものだ。幸せを与えるのは、俺の役目なんだ。だから、言い変えよう。 俺は、お前が言うようにたくさんのゆっくりを飼う・・・・・・幸せにする力は無い。 たった一匹、お前だけを幸せにするのがせいぜいなんだよ。だから、お前が しあわせーになる事は出来るが、他の奴にその幸せを分けてやる事はできない。 そう言う事なんだよ。な?分かってくれ」 「おにいさん・・・・・・」 包み隠さず、正直に言った。れいむにはそんなつもりは毛頭ないんだろうが、 正直、無能をなじられたような、そんな嫌な気分だった。でも、仕方が無いのだ。 「わかったよ、おにいさん」 俺の言葉を聞いたれいむが、俺を見上げる。 「おにいさんがれいむだけをしあわせー!にしてくれるなら、それなら」 決意を込めた瞳で俺を見つめる。 「れいむがみんなをしあわせー!にするよ」 曇りのない瞳で、れいむはそう言い切った。 「どう・・・・・・いうことだ?れいむ」 「れいむはほかのゆっくりをしあわせー!にしてあげるよ。れいむがんばるよ!!」 「いや、だって、お前は俺の飼いゆっくりで・・・・・・」 「かいゆっくりだったら、なんでだめなの?」 その台詞に答える言葉を、俺は持っていなかった。 お前は俺の飼いゆっくりなのだから、俺と一緒に居て、俺のことだけを 考えていればいい。頭に浮かんだその考えのあまりの醜悪さに、吐き気がした。 「ねぇ、おにいさん。それならいいでしょ?れいむはこのこうえんさんでくらしたいよ。 こうえんさんで、みんながしあわせー!になれるように、みんなをたすけてあげたいんだよ」 「・・・・・・俺は、どうなる?」 口からついて出た言葉は、何とも情けないものだった。 「お前がいなくなったら、俺はどうなるんだ?お前がいないと俺はゆっくりできないぜ? それでいいのか?それに、野良と一緒に生活したら、野良を助けてやることなんて出来ない に決まってるだろ。お前、自分がどれだけ優秀なつもりなのか知らないけど、お前一匹が 自分の食い扶持抜いて採って来られる餌だけで、野良ゆっくりが幸せになるんなら、 野良はあんなに惨めな生活をしてねぇよ。なぁ、どうするつもりなんだよれいむ。考え直せよ」 「でも、でも、れいむにはがまんできないんだよ!れいむだけがゆっくりするなんて、 ゆっくりできないいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」 ぽろぽろと涙を零し始めたれいむ。正直、泣きたいのはこっちだ。 これ以上ここに居てはいけない。俺は泣き続けるれいむを抱え上げると、自転車置き場 にダッシュし、れいむを前かごに詰め込んだ。 「家に帰ろう。な?家に帰って、そこで考えよう」 半分以上、自分に言い聞かせている言葉だ。俺はれいむが何か言ってくるのを無視して 自転車のペダルを踏み込んだ。 料理をする気にはとてもならなかったので、晩飯はカップラーメンで済ませた。 れいむの前には、いつも通りのゆっくり用ペットフードが置かれているが、俺が食事を している間、れいむはそれに一度も口を付けなかった。 「・・・・・・おにいさん、のらゆっくりは、なにをむーしゃむーしゃしてるの?」 ぼんやりと平皿に盛られたペットフードを見つめながら、れいむが言う。 「・・・・・・お前の思ってる通りだよ。野良はそんな良いもん食ってねぇ」 がしがしと頭を掻きながら俺は答えた。正直、どうすればいいのか見当もつかない。 「でもな、れいむ。それは仕方ないことだろ?ゆっくりは、人間だって、いや、生きてる ものはみんな、平等じゃねーんだよ。分かるだろ?分かってくれよ!お前が幸せに なる事は悪いことじゃないんだ。お前には幸せになる権利があるんだよ。それ以上 気に病むな。な?もう公園になんて行くなよ。しばらく家でじっとしてろ。それがお前に とって一番良いはずだよ。な?飯食えよ」 俺にとっても、それが一番良い。 「・・・・・・やだ。れいむだけしあわせー!なごはんさんをむーしゃむーしゃしたくない」 だがれいむは、顔を伏せていやいやをするように頭を振る。 正直に言って、腹が立った。今日の態度は全て、れいむの優しさから出たものだと 分かっている。だが、俺にとってそれらはもう、あれが欲しいこれが食いたいなんて 可愛いものを越えた、もっとタチの悪い我儘にしか見えなくなり始めていた。 だが、癇癪を起こす訳にはいかない。今、俺がここで 「そんなに野良と同じ物食いたいってんなら、出て行って勝手に残飯でも雑草でも 食ってろ」 そんな風に言おうものなら、れいむは喜んでこの家を出て行くだろう。 俺はれいむを可愛がっているし、大好きだ。赤ゆっくりから育て上げたという自負もあるし 愛着もある。俺はれいむを失いたくないのだ。 俺は、れいむとこれまで通りに暮らして行きたかった。でも、どうやらそれは無理な 相談なようだ。 「・・・・・・分かったよ」 だから俺は、れいむに折れることにした。 「野良ゆっくりにも、お前と同じ餌を配ってやる。それで良いんだろ」 「え・・・・・・、いいの?おにいさん」 「あぁ、だから、お前も食え」 そうしないとお前が飯を食わないと言うんなら、仕方ないじゃないか。 「でもな、れいむ。俺にしてやれるのはこれだけだ。野良と同じ所に住まないと 駄目だとか、全部全部野良と同じじゃないと嫌だなんて、そこまでは聞いてやれない。 お前は俺の飼いゆっくりだってことを忘れるな。俺はお前をゆっくりさせてやる。 だから、お前もここにいて、俺をゆっくりさせてくれ」 これが、俺に出来る最大限の譲歩だ。これを断られたらもう正直打つ手が無かったが、 れいむは、俺を嬉しそうに見上げ、こくりと頷いてくれた。 「はやくごはんさんよこすんだぜこのくそじじい!!」 俺の毎日に新しい日課が加わる事になってから、一カ月が経った。 あの日から俺は毎日、会社帰りにゆっくり用ペットフードを、公園に居る野良ゆっくりに 配っている。今俺の足元で騒いでいるこの野良まりさは、俺が公園内での餌の分配を 任せている奴だ。 「なんなのぜそのめは!さっさとごはんさんよこさないとれいむにいいつけちゃうん だぜ!?このばかくずにんげん!」 調子に乗っているまりさの言葉に、俺は奥歯を噛みしめる。噛みしめながら、 俺はまりさに餌を渡してやった。 最初の何日か。俺は乗り気ではなかった。ただ、公園に適当に餌をばらまいて、 野良がその餌に寄ってこようが来まいが、確認する事もせず、すぐに帰っていた。 そして、餌を撒くようになってから最初の日曜日。俺はれいむにねだられて、れいむを 公園に連れて行った。れいむは野良ゆっくりがペットフードを食べる姿を嬉しそうに見て、 久しぶりに、心の底からの笑顔を見せてくれた。そしてれいむと俺は、ボール遊びや 鬼ごっこでたっぷりと楽しんだ。 次の一週間。俺は前と同じように、毎日餌を公園に撒いて、それを放置して帰ると言う 事を繰り返した。前の一週間と違う所は、詰まらなさそうな顔で餌をぶちまける俺を、 一匹のまりさが見ているようになった事だ。 毎日同じ場所で餌を撒いているんだから、それを狙っているんだろう。そう考えた俺は、 特にそいつの事を気にしてもいなかった。 次の日曜日。俺はまた、れいむを公園に連れて行った。いつものように俺が餌を撒き、 いつものようにゆっくりがそれに群がり、それを見たれいむが笑顔を浮かべる。 一週間の苦労(実際、安物とはいえペットフードをこれまでの数倍買い続けるのは 財布に痛い)が報われる気分で笑うれいむを眺めていると、一匹のまりさが、 ばら撒かれている餌には眼もくれずに俺と俺のれいむの前まで跳ねてきた。 可愛いれいむを見ていた俺は、そのまりさを見逃していて、気が付いたらまりさは、 れいむに話しかけているところだった。 「ゆっくりしていってね!れいむ!」 「ゆっくりしていってね!!」 「れいむはかいゆっくりなのぜ?」 「そうだよ!れいむはおにーさんのかいゆっくりなんだよ!」 「おにいさんは、ゆっくりがすきなのぜ?」 「だいすきだとおもうよ!れいむおにーさんに、とってもゆっくりさせてもらってる んだよ!」 「おにいさんがごはんさんをくれるのは、ゆっくりがすきだからなのぜ?」 れいむの顔が曇った。 「ゆぅーん、わからないよ・・・・・・。ほんとうはおにーさん、れいむだけにごはんさんを くれるほうがゆっくりできるんだとおもうよ・・・・・・」 「じゃあ、なんでおにいさんはごはんさんをくれるんだぜ?」 「それは、れいむがわがままをいったからだよ・・・・・・。れいむだけしあわせー!な ごはんさんをむーしゃむーしゃして、れいむだけゆっくりするのはゆっくりできないんだよ。 だから、みんなにもごはんさんをあげてねって、れいむはおにーさんにわがままをいった んだよ・・・・・・れいむはわるいゆっくりだよ・・・・・・」 しょげ返るれいむ。しかし、まりさはそれを聞くと、満面の笑顔を浮かべた。 「そうなのぜ!?れいむはとってもゆっくりしたゆっくりなんだぜ!!」 「え?」 「ここにいるゆっくりは、みんなゆっくりできてなかったんだぜ!でもいまは、おにいさんが ごはんさんをもってきてくれるおかげで、みんなとってもゆっくりできてるんだぜ!れいむは 『ゆっくりしていってね!』のこころをよくわかってるんだぜ!ゆっくりのなかのゆっくり なんだぜ~!」 「でも、れいむはおにいさんにわがままを・・・・・・」 「そんなことないんだぜ!みんなをみるんだぜ!みんなをこんなにゆっくりさせられる れいむが、ゆっくりできないゆっくりなわけないんだぜ!おにいさんだって、れいむのこと をゆっくりできるゆっくりだとおもってるんだぜぇ!おにいさん!そうなのぜ!?」 まりさが俺の方を見上げてくる。何だこいつ?妙に口が回りやがる。俺のれいむに 取り入ろうってのか。そう思って俺が眼を細めた時、れいむの視線に気づいた。 れいむはそわそわとした、何処か期待した眼で、俺を見つめている。 「おにいさん!れいむはゆっくりしたゆっくりなのぜ!?」 まりさが俺に答えを促してくる。こいつ、やばい。 「れいむは我儘を言ったか?」ではなく、敢えて「れいむはゆっくりしているか?」と 聞く事で、俺から肯定的な返事を引きだそうとしていやがる。 「・・・・・・あぁ、そうだな。れいむはゆっくりしたゆっくりだ」 くそ、言わされてしまった。 「おにいさん!!」 れいむがキラキラと輝く眼で俺の事を見つめる。 れいむは優しい。俺に負担をかけている事を、内心気に病んでいたんだろう。その 罪悪感を今、まりさのおかげで払拭できたのだ。そしてまりさがニヤニヤと笑いながら、 ここぞとばかりにれいむに追従する。 「よかったのぜー、れいむ!おにいさんもれいむのことを、ゆっくりできるゆっくりだって いってくれてるんだぜ!」 「うん。れいむ、れいむがおにいさんをこまらせるわるいゆっくりだとおもってゆっくり できなかったんだけど、まりさのおかげでゆっくりできたよ!」 「まりさはれいむみたいなゆっくりしたゆっくりとおともだちになりたいんだぜ~! れいむ、まりさとおともだちになってほしいんだぜ!」 「うんいいよ!れいむも、まりさみたいなゆっくりしたゆっくりとおともだちになりたいよ!!」 完全攻略。こいつのゆっくり心を捉える技術は、見事という他無い。 「つぎにこうえんさんにきたときも、またれいむにあいたいんだぜ!れいむの おにいさんのおかげで、まりさはまいにちこうえんさんにいられるから、れいむがいつきても だいじょうぶなんだぜ!」 「れいむもまりさにあいたいよ!おにいさん・・・・・・いい?」 きちんと俺に許可を求めるれいむは偉い。偉いが、今ここで俺が駄目だなんて、 言える訳がない。 「・・・・・・分かったよ」 俺は、こう答えるしかない。 「ありがとう!おにいさん!!これからもいっしょにゆっくりしようねまりさ!」 「まりさこそよろしくなんだぜ!いっしょにゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 笑いあう二匹。しばらくれいむと見つめ合っていたまりさが、つと俺を見上げてくる。 「おにいさんも、これからよろしくなんだぜ」 俺に向かって言うその顔には、「カモを見つけた」と大書してあるのだった。 その次の日。俺が公園に着くと、そこには俺を待ち構えていたまりさがいた。 「ゆっへっへ、にんげんさん、きょうもごはんさんもってきたんだぜ?」 「・・・・・・あぁ、持って来てやったよ」 気に入らない。そのニヤニヤ笑いは、明らかに俺を馬鹿にしたものだ。 「じゃあ、そのごはんさんはまりさにまるごとよこすんだぜ!そのごはんさんは、 このまりささまがゆうこうにかつっようっしてやるんだぜ!」 やはり、昨日のれいむへの態度は猫を被っていたのか。餌を持っていない右手を 握り締めると、それを目ざとく見つけたまりさが、後ずさりながら言った。 「おぉ~っと、まりさをつぶすきなのぜ?そんなことをしたら、れいむはどうおもうのぜ?」 「どうも思わんさ。ここにゆっくりは沢山いるし、野良が死んじまうなんていつもの事だ」 「れいむは、まりさとやくそくしたんだぜ?つぎにれいむがこうえんさんにきたときに、 まりさがいなかったらどうするつもりなんだぜ?」 「『まりさは三日前から見なくなった』とでも適当に嘘ついて、お前の事は諦めさせるさ」 「それはむりなのぜ!まわりをみるんだぜ!!」 周りを良く見渡すと、そこかしこの茂みに、こちらを見てにやにやと笑うゆっくりがいた。 その数は、ざっと数えて十匹以上。最初は餌を狙っているのかと思ったが、どうも様子が おかしい。 「こいつらは、まりさのてしたなのぜ!もしまりさをつぶしたりしたら、れいむが こうえんさんにきたときに、こいつらが『じじいがまりさをつぶした』ってつげっぐちっして やることになってるんだぜ!!げらげらげら!!!」 笑い終わったまりさが顎をしゃくると、ゆっくりたちはてんでばらばらの方向へ 逃げ出して行ってしまった。自然が多いということは、遮蔽物が多いということだ。今から 追いかけても、あいつらを正確に全滅させるのは、かなりの難易度になるだろう。 「そのごはんさんをまりさによこすのぜ!いやなられいむに、『おにいさんはまいにち こうえんでのらゆっくりをつぶしてる』っていってやってもいいんだぜ!!!」 くそっ、こいつ!こいつをれいむと喋らせたのは間違いだった!! こいつゆっくりの癖に、やたらと頭がキレやがる!! こいつは俺とれいむの関係を見抜き!俺のれいむへの愛着を見抜き! 何故俺が冷ややかな眼で毎日公園に餌を撒くのか!その理由を完璧に理解して! その上で俺の弱点、ボトルネック、すなわちれいむを押さえて、あろうことか 俺を強請りにきやがった!!何て奴だクソったれ!!! その上、その交渉の仕方も実にソツが無い。俺がこれからもこの公園を利用 するには、こいつの要求を飲む事が不可欠だ。他にも公園はあるが、ここが一番 近くて大きい。それに、いきなり行く公園を変えれば、れいむは訝しがるだろう。 「・・・・・・大したタマじゃねーか、饅頭」 奥歯を噛みしめながら、俺は言った。 「ゆっへっへっへ!!」 まりさは実に嫌な笑い方をする。 「れいむが来た時に、そんな卑しい笑い方するんじゃねーぞ」 まりさの眼の前に、今日の分の餌を丸ごと置いてやった。 勝ち鬨の声を上げるまりさを見ないように、俺は後ろを向く。一度地面を蹴り飛ばし、 盛大に砂を巻き上げてから家に帰った。 そして現在に至る。まりさは憎らしいほど完璧に立ち回り続けた。 「れいむ、れいむのおかげでいっつもゆっくりできるのぜ!ありがとうなのぜ!」 「おれいはれいむじゃなくて、おにいさんにいってね!」 週一回、俺が休みの日の外出は、れいむの生き甲斐になった。公園に行くたびに ゆっくりしているゆっくりが増え、優しいまりさとも会えるのだから当然だろう。 だが、俺はまりさがやっている事を知っている。まりさは、俺から奪った(敢えて奪う という表現を使う)食料を元手に、公園内で一大派閥を築き上げているのだ。 れいむが見る「ゆっくりしたゆっくり」とは、まりさの派閥に属するゆっくりの事だ。 他の派閥に属するゆっくりは、俺たちの恩恵を何も受けられないボロボロのゆっくりは、 れいむの眼に映らないように、俺たちに近づく事を禁じられている。 反吐が出るが、しかし、これは俺にもメリットがあった。「少ない手間と餌で、れいむに 『ゆっくりした野良ゆっくり』という幻想に近い物を見せる事が出来る」というメリットだ。 今ではれいむが見る野良ゆっくりは、忌ま忌ましいまりさが選別した見た目の良い ゆっくりに限られている。目に映らない物は無い物と同じ。れいむは俺のおかげで、 野良ゆっくりが皆ゆっくりできるようになったと思い込んでいる。 舞台の書き割のような『野良ゆっくり』。まりさは俺にそれを提供してくれていた・・・・・・。 加えて、まりさの性向も俺を助けていた。 「まりさはやさしいしかっこいいよ・・・・・・」 もじもじとまりさに擦り寄っていく俺のれいむ。件の糞まりさの奴に惚れている事は、 傍から見ても明白だった。 「ゆっ、れいむ!まりさなんかよりおにいさんのほうがかっこいいんだぜ!ほら、 それよりあっちをみるんだぜ!かわいいおちびちゃんがいっぱいいるんだぜ! あのおちびちゃんがゆっくりできるのは、れいむのおかげなんだぜ!」 巧みに(?)れいむの興味を逸らすまりさ。まりさはれいむから友達以上の好意を 示されそうになると、いつもこうやって話をはぐらかしていた。 そう。まりさは俺の飼いゆっくりになる気は微塵も無いのだ。 まりさは俺の強さと、その利用価値を知っている。そして、俺から餌を引き出し 続けるには、れいむが俺の飼いゆっくりであり続けなくてはいけないと言う事を知っている。 もし、れいむがまりさを慕って野良になれば、まりさはいとも容易くれいむを切り捨てる だろう。利用価値が無いからだ。 なら、れいむを利用して俺の飼いゆっくりになろうとしないのは何故か?それは、 権力志向の強いまりさは、飼いゆっくりの安楽な生活より、野良ゆっくりを束ねる 今の立場を好んでいるからだ。もしかしたら、俺の家という、いわば俺の テリトリーに来る事に恐れを感じているというのも、あるのかもしれない。 だから、まりさにれいむと番になる気はさらさら無い。あるのは、俺とれいむを骨まで しゃぶり尽くしてやると言う底無しの欲望だけ。 結果だけ見れば、俺は望む物を手に入れてはいる。 結局、餌をそこらに撒くか、それとも誰かにまとめて渡すかたったそれだけの違いで あるし、まりさは俺の餌を使って最高の効果をもたらしてくれている。ギブアンドテイクの 関係だと言えなくは無い。だが、気にくわない。断じて気にくわない。俺がゆっくりなんかの 掌の上で踊らされているなんて。屈辱にも程があるってもんだ。 「おにいさん!そろそろかえったほうがいいんじゃないのぜ?」 れいむを捌ききれなくなったまりさが、俺に助けを求める。 「そうだな、そろそろ帰ろうか、れいむ」 「えっ・・・・・・あ、うん、わかったよ。またねまりさ」 眉根を寄せ、不満そうにしながら、それでも俺の言う事を素直に言う事を聞くれいむ。 俺はれいむを抱え上げ、頬をつついてやった。 「またきてねれいむ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!まりさ!またくるからね!!」 俺の手に抱えられたれいむが、楽しそうにまりさと挨拶を交わす。その間中俺は、 人畜無害そうに笑っているまりさを、冷やかに見つめ続けた。 ヒヨドリの幸せ 下 へ続く
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駅を出るともう雨が上がっていた。 数駅移動しただけだったのだが道も大分乾いており、お日様が顔を出していた。 傘を片手に町を歩いていると、御馴染みの物体が目に飛び込んできた。 「おちびちゃん、かわいているばしょをえらんですすむんだぜ!」 「ゆっくりしんちょうにね!おかあさんたちもゆっくりすすむよ!」 「れーみゅ、ゆっくりすすむよ!」 「おねーちゃん、まってほしいのじぇー!」 仲の良さそうな親子ゆっくり達、どの個体も乾いたアスファルトを慎重に進んでいた。 親ゆっくりが先頭を行き、それに続いて子ゆっくり達が後を追う。 親ゆは時折子の方を振り返り、声援を送っていた。 そんなゆっくり親子を見ていたら思わず声をかけていた。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「ゆゆ?!ゆっくりしていってね!」」」」 親子揃って同じ反応をするゆっくり達、その表情はどれも自信たっぷりといった感じである。 「貴方達はゆっくりしているの?」 「とうぜんだよ!れいむたちはゆっくりしているよ!」 「そう、なら私もゆっくりさせてもらうわ…」 私はその中の一匹、親れいむに向かって傘を振る。 石突が親れいむの頬を切るように掠めると、皮が少し破れた。 「ゆん?ゆぎゃぁぁぁぁ!いだいぃぃぃぃぃ!!」 「「「ゆ?………」」」 途端に騒ぎ出す親れいむだが、残りのゆっくり達は状況が整理できずに固まっている。 私は親れいむにターゲットを絞り傘で突付き回す。 「ゆぎゃん!やめでぇ!いだいぃぃぃ!どぼじでこんなごどするのぉぉぉぉぉ?」 どうしてって?………そうね…傘を持っていたからかしら? 「ゆわぁぁぁぁ!にんげんさん!れいむをいじめるんじゃないんだぜぇぇ!!ぷっくぅぅぅぅぅ!!」 「おかーしゃん!………れーみゅもぷっくーしゅるよぉぉぉぉ!」 「ゆびゃぁぁぁん!ま、まりしゃもぷくーしゅるのじぇ!」 親まりさがようやく動き出し、私を威嚇しようと膨れ上がる。 子ゆっくり達も泣きながらも続けて膨れ上がる。 体を大きく見せるのは威嚇の基本なのかもしれないが、そんな事してる間に逃げれば良いものを、 ただ私を睨むように見据えて止めてと器用に喋るだけである。 「ゆびゃん!ゆぎぃぃ!やべろぉぉ!いだい!ゆぎぃ!ゆびぃ!ゆぎゃ!がががが…れいむのかわいいおめめがぁぁぁぁ?!」 親れいむを突付いて遊んでいたら、手元が狂って目を突き刺してしまった。 「ゆわぁぁぁ!れいむぅぅぅぅ?!やめるんだぜぇぇにんげんさん!ぷっくぅぅぅぅ!!」 「「ゆわぁぁぁ!おかーしゃんのおめめがぁぁぁぁ!!………ゆっきゅうぅぅぅぅ?!」」 片目を潰されて一段と大きな悲鳴を上げる親れいむ。 それを見てさらに大きく膨れ上がろうとする親まりさ。 子ゆっくり達もそれに続いて膨れ上がるが、恐怖の方がそれを上回っているのか今一膨れ上がれて居なかった。 「もうやだぁぁぁ!れいむはおうちにかえるよぉぉぉぉ!!」 「ゆあぁぁぁぁ?!れいむぅぅぅぅ?!」 親れいむは耐えられず跳ねながら逃げ出した。 私はそれを追いかけ、誘導するように傘で突付く。 親れいむは私の誘導通りに、車道の方に逃げて行く。 「れいむぅぅぅ!!そっちはあぶないんだぜぇぇぇぇ!!」 「なにいってるの?ここまでくればあんぜんだよ!かしこくってご 『ぐちゃ!』 ゆげべ!」 「れいむぅぅぅぅ?!」 「「おかーしゃ?!」」 丁度のタイミングで通りかかった車に半身を潰されるれいむ。 それを見て悲鳴を上げるゆっくり親子、美しい絵だ。 流石、お笑いの神様は解っていらっしゃる。 「おかーしゃん!ゆっくり、ゆっくりしてぇぇぇぇぇ!!」 「ゆんやぁぁぁ!おかーしゃん!ゆっくちぃぃぃ!」 「おちびちゃん、そっちはあぶないんだぜぇぇ!!」 「ゆびぃ!はなしちぇぇぇ!おかーしゃんがあぶないのじぇぇぇぇ!!」 潰れた親れいむの元に駆け寄る子れいむ。 後を追う子まりさを必死に親まりさが止めるが、子れいむは車道に飛び出し親れいむの元に辿り着いてしまった。 「おかーしゃん!ゆっくち、ゆっくちぃぃぃ!」 「ゆげげ…ぎべべ…ぎ…ぎ……ぎぎ…」 「れーみゅ、ぺーろぺーろしゅるよ!…ぺーろ、ぺーろ、ぺーろ…」 「おちびちゃん、こっちにもどるんだぜぇぇぇ!そっちはあぶないんだぜぇぇ!」 子れいむは半分潰れた親れいむを舐め始める。 そんな事をした所でこの親れいむが復活するなんて事はまずないだろう。 もはや親まりさの声も届いていないだろう。 そんな美しい親子愛(笑)に突っ込みを入れるように、トラックがれいむ達を踏み潰して走り去った。 「れいむぅぅぅ?!おちびちゃぁぁぁぁん!」 「ゆびゃぁぁぁ?!おねーしゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!」 しんぐるふぁざー?になった親まりさと子まりさが泣き喚く。 私はそんな親まりさの帽子を掠めるように傘を振るう。 「ゆん?…ゆがぁぁぁぁぁ?!まりさのすてきなおぼうしがぁぁぁぁ?」 上手く帽子を払い落とす事に成功すると、今度は帽子を水溜りにつけて傘で突付いていく。 「なにするんだぜぇ?!やめてね!まりさのすてきなおぼうしさんがぁぁぁぁ!!」 それを止めようと必死に私の傘に纏わり付く親まりさ。 流石にちょっと邪魔くさいので片目を傘で突き刺し動きを止める。 「ゆぎゃぁぁぁ!まりさのきれいなおめめがぁぁぁぁ!!」 親まりさは痛みに転げ回り、別の水溜りに突っ込んでいった。 「ゆびゃぁぁぁ?!おみずさんはゆっくりできないぃぃぃぃぃ!!」 あんよを上に向け必死に水溜りの中でもがく親まりさ。 私はそんな親まりさのあんよを傘で突き刺し穴だらけにしていく。 「やめるんだぜぇぇ!いだい!ゆびゃん!ごめんなざいぃぃぃ!!もうやだぁぁぁぁ!!」 「ゆんやぁぁぁぁぁ!にんげんしゃん、どぼじでこんなこちょしゅるのじぇぇ?!」 どうしてって?…そうね…雨上がりに貴方達を見たからかしら? 涙ながらに私に訴える子まりさ、私はそんな子まりさの片目を傘で突付く。 「ゆびゃん!まり者のきれいなおべべががぁぁぁぁ!!ゆっびぃぃぃぃ!!」 痛みにゆんゆん泣く子まりさ。 先ほどまで幸せそうだったゆっくり親子はあっという間に不幸のどん底だ。 「ふふふ…私が憎い?なら憎むと良いわ、それが貴方の生きる糧になるわ…」 「どぼじで?どぼじでごんなこどしゅるのじぇ?ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「そうね…せっかく持ってきた傘を使ってみたくなったからかしら?」 「ゆ?………」 私の行動に思考が追いつかなくなった子まりさはその場で固まった。 私は水溜りから必死に脱出しようとして溶け出している親まりさと、無言で涙する子まりさを残してその場を去った。 少々時間をとったが、早めに家を出てきたので予定にはまったく支障がない。 その上素的な一時を堪能出来たので、今日は上機嫌だ。 時間にゆとりを持って行動する、これが真にゆっくりするという事なのだろう。 そう考えながら、ゆっくり出来なくなったゆっくり親子の末路を想像して思わず微笑みながら会社に向かった。 完 雨上がりに傘を持っていると、なんだか振り回したくなったりしませんか? まあ、人前でそんなことはしませんが… 徒然あき 徒然あきの作品集 このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! ◆SS感想掲示板 徒然あき感想スレへ ※書き込む時はSSのタイトルを書いて下さい。 コレをコピーしてから飛びましょう→『ふたば系ゆっくりいじめ 1336 雨上がり』 トップページに戻る
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注意!!! 何を注意すればいいのかよく分からないのです。 とにかく何が起こってもうろたえない方、どうぞ。 とあるマンションの一室にて。 男女の営みを終えた二人がベッドの上で話す。 「ねぇ、あなたは一体何者なんですか?」 「何さ、藪から棒に。俺は俺。それ以上でも、それ以下でもないよ」 「・・・あのね、わたし、あなたのこともっと知りたくて、 あなたの同級生の人たちに聞いたの。学生の頃はどんな人だったの?って」 「そしたら、みんなあなたの事なんて知らないって言うの 一人が卒業写真を見せてくれたんだけど、あなたは載ってなかったわ」 「・・・」 「あの、」 「・・・こーゆーはなし、しってる?」 「え?」 昔々、とある山奥に二人の親子が住んでいた。 「ねー、おとうさん どうしてれいむのからだとおとうさんのからだはちがうの?」 「うるせー! この豚饅頭野郎!!!」がしゃーん!!! 「てめーの顔なんか見たくもねえええぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃあああああ!!! どぼぢでただくのおおおぉぉぉおお!!!」 ぼてぼてぼて。れいむが普通のゆっくりと違う点。それはこのれいむには体があった。 このれいむの親は山奥で一人寂しく暮らす男の家に侵入し、虐待され尽くした後で殺された。 男はさすがにやりすぎたかなと思ったが時すでに遅し。 死体をかたづけようとすると、赤ゆっくりが出てきた。 まぁ、子ゆっくりの一匹くらい育てても大丈夫かなと考えそのまま育てることにした。 れいむは生まれたときに最初に見た男が自分の親だと思いこみ、 自分は人間の子だと思いこむようになった。 そのせいかどうかは定かではないが、れいむに体が生えてきた。 男は気味悪がった。 ゆっくりと言えば顔だけの駄饅頭。 それに四肢が付くなんて。 きめぇ丸やれみりゃのような体付きを見たことのない男が思ったのは 自分が虐待して殺したこのれいむの親の呪いではないだろうか。ということだった。 それから、男はれいむに日常的に虐待を繰り返すようになり、 れいむは男の元を離れた。 「ゆー! あんなひどいじじいとはくらせないよ!!!」 れいむは生まれて初めて山を降り、 男が麓にあると言っていた町に向かった。 れいむが町を歩くと道行く人々はみな指を指してひそひそ話。 「かわいくってごめんね!!!」 ウインクしながらポーズを決めるれいむ。 「おや、体付きれいむなんて初めて見たよ。」 「ゆっ! おにいさん、ゆっくりしていってね!!!」 「ふふふ、れいむ、僕と来ないかい? 君を一躍有名人にしてやるよ」 それから、珍しい体付きれいむは見せ物小屋やTVショー、週刊誌に載り 全国にその姿が知れ渡った。 しかし、数ヶ月もすると、皆れいむのことなど忘れた。 金儲けの種にならない事を悟った男はれいむをゆっくりんぴーすに引き渡し、 自分は儲けた金の全てを持ってどこかへ行った。 ゆっくりんぴーすでは世にも珍しい体付きれいむと言うことで大変重宝された。 れいむはとても幸せだった。 美味しいご飯を沢山食べることが出来るし、暇になれば職員が遊んでくれる。 れいむのわがままは全て叶えられた。 しかし、一つだけ不満があった。れいむには友達がいない。 どこで仕入れた知識だろうか、ある日れいむは言った 「れいむは『がっこう』にいきたいよ!!! それで、おともだちがほしいよ!!!」 早速近くの小学校に転入することが決まった。 転入前日 「あしたから『がっこう』だよ!!! おともだちいっぱいつくるよ!!!」 「では、れいむさん、自己紹介してください」 「れいむはれいむだよ!!! みんな! ゆっくりしていってね!!!」 れいむは満面の笑みと張り裂けんばかりの大声で挨拶した。 「ぅっせぇなー」 耳を塞ぎながら、生徒の一人がぼやいた。 その日の昼休み。 「みんな、ゆっくりしようね!!!」 「うわぁ、なにあれ・・・」 「キモッ! あれってずっと前にテレビに出てた糞饅頭じゃね?」 「あ、たっちゃんってあのれいむ大嫌いだったね」 「話しかけんなよ糞饅頭!」 「ゆ! なんでそんなこというの!? れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよ!!!」 クスクス 「なにあれ、饅頭が人間ぶってない?」 「ゆっ!?」 「ゲラゲラ、体付きなだけで人間になったつもりなの? 馬鹿なの?」 「「「ゲラゲラ」」」 「ゆぅ!?」 「なんでそんなこというの!!! れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよー!!!」 「嫌だよ」 「なんでお前のような害獣なんかと仲良くしなきゃいけねーの? 冗談じゃねーよ!」 「ゆ、ゆぐ、、、どぼじでそんなごというのおおおお!!!」 「うわ、泣いたよ。」 「きもっ! 饅頭泣き顔キモッ!!!」 「ゲラゲラ」 れいむが泣いても誰もれいむを助けに行かない。 それどころか、益々馬鹿にしたり笑ったり。 そして午後の授業 「クスクス」 「ケラケラ」 れいむは直感した。 これはれいむを馬鹿にして笑っているんだ。 今までテレビや見せ物小屋で笑われてたときはみんなれいむと仲良くするために笑っているのだと 勘違いしていたが、昼休みの一件から人間のひそひそ声やかすかな笑い声が とても不快な物へと変わっていった。 「先生ー、餡子臭くて授業に集中できませーん」 「先生ー、僕もー」 「え、何、何で? 誰かお菓子持ち込んだのか?」 困惑する教師。 「えー、そんな事する奴いないでしょー」 「きっと誰かが饅頭臭いんだよー」 「プークスクス」 「ゆー! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!!」 昼休みに饅頭と罵られたれいむは饅頭という言葉に敏感に反応した。 「だれもれーむを饅頭なんて言ってないよねー」 「ねー」 「黙れ!!!」 ばーん!!! 教師が怒鳴り教卓を強く叩くと教室内が静まりかえった。 「お前達の言いたいことはよく分かった、○○と○○と、・・・後で職員室に来い」 中間休み。 授業中にれいむを馬鹿にしてはしゃいだ数名が教師にこっぴどく叱られ、 戻ってきたころには全員泣きはらしたのか、目の周りが真っ赤だった。 その日の残りの授業はれいむのクラスだけが延々と道徳の授業を行った。 クラス全員が不機嫌になった。 ある子供は余計な波風を立てる馬鹿なクラスメートに、 ある子供は突然やってきた空気の読めない体付きれいむに。 そして、その日最後の授業の時間。 クラスの女子が海外に引っ越すことになっているらしく、そのお別れ会となった。 その頃には教師により、いじめっ子達が制裁されたことにより、れいむの機嫌は良くなっていた。 そして、放課後。 「おいコラ! 糞饅頭! てめーのせいで怒られたじゃねぇかよ!!!」 がっ! 「いだいいいいぃぃぃぃいい!!! やべでええぇぇぇぇえええ!!!」 「うるせえよ!!! 大体、何でてめーのような害獣をクラスメートにしなきゃいけねーんだよ!!!」 ぼこすかとれいむをリンチにする少年達。 「ゆぎゃああああ!!! いだいいいいぃぃぃ!!! ぼおやべでえええええ!!!」 泣き叫んでも少年達の怒りは収まらない。 れいむの頭が変形し、所々餡子が染み出した頃。 「こら! あんたら! なにやってるの!!!」 「うわ、やべ・・・」 今日、お別れ会をした少女だった。 少女は教師に言いつけ、怒り心頭の教師は体育館裏でたむろしていた少年達を見つけ、 さっきよりも酷く叱り、説教した。 「ありがどおおおお!!! おでえざん!!」 「あはは、別に良いのよ。私アイツらのような悪ガキ大嫌いだし」 少女がれいむに肩入れしたのはれいむのためではなく、 たとえどんな相手であろうともいじめのようなゲスな行為を許さない性格の為である。 「ゆっぐりじようね!!! これがらもでいぶどいっじょにゆっぐりじようねええええ!!!」 「ごめんね、私、明日からもうここにはいないの。」 「ど、どぼじで、どぼじでなのおおおおおおお!!!」 お別れ会の意味も理解できなかった餡子脳が叫ぶ。 少女は丁寧に自分が海外に旅立つことを伝え、別れの挨拶を言った。 「ゆっぐりじでいっでよー! ゆっぐりじでいっでよー!!!」 「きっとまたいつか会えるよ、じゃあねー」 そう言うと少女は急いで帰っていった。 「もうがっこうには行かないよ!!!」 ゆっくりんぴーすに戻ったれいむはそう切り出した。 今まで友好的だと思っていた人間が自分を饅頭だと罵り、虐めてきた。 せっかく仲良くなれると思った子はいきなりいなくなった。 もはや学校に行きたいなどとは言えなかった。 職員は最初困惑したが、れいむが傷だらけであったことと、教師の証言から、 学校で虐められた事を把握し、責任者を交え会議した結果、れいむは学校に行かせず 自分たちで育てることにした。 そしてその次の日から、れいむに自分が人間でなく饅頭「ゆっくりれいむ」であることを教え込んだ。 「ゆー! ちがうよ! れいむはにんげんさんだよ!!! おかしなこといわないでね!!!」 最初こそ否定したが、様々な例を交え、根気よく教え込んだところ、 数週間掛けて自分が饅頭「ゆっくりれいむ」であることを理解した。 「れいむはにんげんさんじゃなかったんだね・・・、だからいじめられたんだね・・・」 れいむは悲しげに呟くが職員はこれで悩みの種が一個減ったことを喜んだ。 れいむが自分の正体を悟った次の日から、職員はれいむと通常のゆっくり種を引き合わせ、 仲良くさせようと試みた。 しかし、 「ゆっ! へんなれいむとはゆっくりできないんだぜ!!!」 「どぼ(ry」 「れいむのはじさらしはさっさとしんでね!!!」 「ゆ"うう"ううう"うう"う!!!」 通常種達はれいむをけなし、迫害した。 もともとゆっくりというナマモノは異端を徹底的に攻撃する傾向にある。 れいむは異端中の異端だった。 職員達は何とかれいむをゆっくり達と仲良くさせようと頑張ったが全て無駄だった。 そんな中、れいむは「人間になりたい」と言うようになった。 「れいむ、にんげんさんになって、やさしいおねえさんとゆっくりしたいよ」 「にんげんさんになってかわいいあかちゃんほしいよ」 人間になればもう、人間からは虐められない。 自分を迫害するゆっくり種ではなくなる。 この二点を求め、職員に懇願するが、それはさすがの職員達にも叶えられなかった。 それから数年後・・・。 「れいむ、この方が体を提供してくださる男性だ」 「こうしてれいむは人間の体を手に入れ、綺麗なお姉さんを恋人にしてすっきりー! しましたとさ」 「・・・え・・・ぁ」 みるみる女の顔色が悪くなる。 「まさか、あなたが・・・」 今にも失神しそうな顔だ。 「お、おいおい、俺はれいむじゃないぜ? しっかりしろよ」 「ひっ! じゃ、じゃあまりさなの!?」 「なぜにそうなる」 男はふぅと一息ついて話し始める。 「なあ、君。俺と君はそれぞれ何歳だ?」 「え、23・・・くらい?」 「両方とも?」 女はこくりと頷く。 「残念、君は23だが俺はもう3Xだ。」 「え? そんな、だって一緒に入社式に出たじゃない!」 「確かに入社式は一緒に出た。」 「俺はな、まだ社会人成り立ての頃に交通事故にあってな、 しばらく植物人間になってたんだよ。 しかもなぜかは分からんがその間体の成長も老化も完全に止まったらしいんだ。 んで、事故から数年、俺は奇跡的に回復したんだよ。 そして、俺はリハビリに勉強に、就活。全て病院でこなしたのさ。 それから、君と出会った訳だ。 だから、俺の出身校に行っても俺の事なんて知ってる奴がいないのさ。 なんせ、俺の同級生は君よりもずっと年上だもの。」 「なんだ、そう言うことだったんですか。焦りましたよ、全く、もう」 「そうかいそうかい、今度、俺の家に来な。おじさんの卒業アルバム見せてあげるから」 「はぁい! それにしても、良くできた話ですね。 私、すっかり騙されちゃいましたよ」 「全て嘘ってわけじゃないさ」 「え?」 「俺が植物状態から回復した理由はな、 話の最後に医者がれいむに言ったろ? 体を提供云々。 あの医者もよほどせっぱ詰まったんだろうね。 俺の体をれいむにやるって言ったら、俺の意識が回復したそうなんだ」 「え? それじゃあ・・・」 「話のれいむの事は最後の人間の体を手に入れて、以外は全部本当のことさ。」 「あ・・・あ、」 「そ、そのれいむは今どこに?」 「病院さ、俺の体が意識を取り戻して、れいむにやる体が無くなったら、 今度はれいむが植物人間ならぬ植物ゆっくりになったそうだ。見に行く?」 二人が病院に向かうとれいむはベッドに寝かされ、 額にはオレンジジュースの点滴の針が刺されていた。 「これがそのれいむさ。」 「れいむ、れいむ! 私よ! 覚えている!?」 男が何やってんだよと突っ込もうとした瞬間、れいむが目を覚ました。 懐かしい声だよ! 学校で優しくしてくれたお姉さんの声だよ!!! 「懐かしい声がするよ・・・、学校で優しくしてくれたお姉さんだね」 しわがれた声でれいむはしゃべる。 「そうよ! 私よ!」 れいむが目を開ける。 「ゆぅ? おねえさんだれ?」 年月は少女の面影を女から奪い取っていた。 「ふふ、仕方ないよね。あのときからもう十何年も経っているもの」 「ゆっ! 十何年も!!!」 れいむがそう言うと突然れいむの体が黒ずみだしてきた。 「なんでおごしだの!? なんで、なんで」 普通、ゆっくりの寿命は数年程度である。 れいむは自分がゆっくりであることを理解していた。 だから、今の自分がものすごく年をとり、死んでしまう年齢となったことを認識した。 その瞬間、体は急激に劣化を始め、れいむから生命が逃げていった。 「もっと、ゆっくり、した、かった、よ」 れいむは切なる願いを述べて息を引き取った。 終わり 言い訳タイム 年齢計算は合ってるかなぁ? →何も考えずに書いてたからよくわからんのです ここがおかしい →こめんなざいいいいいいいぃぃぃいい!!! 本当は数KBのショートSSにしたかった。 でも気付いたら結構長めになった。 今まで書いたSS ドスまりさとゆうか1~3 ゆっくり闘技場(性)1 不幸なきめぇ丸 名物餡玉 行列の出来るゆっくり スカウトマンゆかりん前・後 ファイティング親子とゆっくり まりさの商売 ぱちゅりーの失敗1~4 盲点 進化 ぶっかけ!ぱちゅりー!
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幻想の結界「博麗 霊夢」 「八雲 紫」 読み:げんそうのけっかい「はくれい れいむ」 「やくも ゆかり」 カテゴリー:Extra/女性 作品:東方混沌符 属性:地 ATK:6(+1) DEF:4(+1) 【エクストラ:「博麗 霊夢」 「八雲 紫」】 Battle 〔自分の手札の地属性のカード1枚を控え室に置く〕このキャラは、ターン終了時まで、攻撃力と耐久力が2上昇する。この能力はバトルに参加していても発動できる。 R:さぁ、紫。こんな奴さっさと倒して、地上に帰るわよ SR:博麗霊夢の言う事は全て正解よ illust:藤枝雅 TP-038 R SR 収録:ブースターパック 「OS:東方混沌符 1.00」
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『平日のおやつ』 9KB 愛で 虐待 平日だっておやつを食べる *ゆっくりは死にません、歯切れが悪くってごめんなさい *三作品目です、前回の続きみたいな感じです~、それでもよければどうぞ *でも別に前作を読まなくっても問題ないです 『れいむ。あなた可愛いわね~』 このれいむは、お姉さんに買われて一週間目の飼いゆっくりだ ペットショップで銅バッジ、しかも成体のれいむはなかなか買い手がつかず、 先日の半額セールでやっと飼いゆっくりになることができたばかりだった 「ゆっ、ありがとうおねえさん!れいむはかわいいよ!」 銀バッジが取れるほどの知能はないが、元気がありゲス化もしていない普通のれいむだった だが、 『本当にかわいいわ、食べちゃいたいぐらい』 「ゆゆっ?おねえさん、なんだかおめめがこわいよ!」 (はしたないとは思うんだけど、そろそろ限界ね。よし、私は十分我慢したわ!) そう、お姉さんがれいむを買ったのは、決して愛でるためではなかったのだった 平日のおやつ まずは下ごしらえをする お姉さんは手慣れた様子でれいむの体より少し小さめの箱にぎゅうぎゅうと押し込んで動きを止める 『あのね、れいむ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら?』 「やめてね、おねえさんなにするの!?これじゃれいむうごけないよ!?やめてね!」 『あー、叫ばないで壁薄いんだから!ちょっと静かにしてよ』 お姉さんはれいむの口をガムテープでふさいでしまう れいむはまだもごもごと何か叫ぼうとしているが、それを無視してお姉さんは深呼吸をしている 『一度言ってみたかったのよね~、えっと、ゴホン れいむ、おねえさんにあまあまちょうだいね!』 満面の笑みでお決まりのセリフを口にした後、お姉さんは顔を真っ赤にしながら後悔した 『……やばい、恥ずかしい。』 「んんんん?(おねえさんなにいってるの?)」 『ちょ、れいむ止めて、そんな目で見ないでぇ!』 れいむの視線を遮るように手で顔を隠して身悶えるお姉さんが落ち着いたのは、それから約3分後のことだった 一人暮らしで彼氏もいない、ストレスの多い生活を送っているおねえさんをれいむは憐れんだが、今はとりあえず助けてほしかった 閑話休題 『というわけで、、言ってなかったけど私ゆっくりを食べるのが大好きなの!』 もがいても疲れるだけだと悟ったれいむは、目に恐怖をにじませながらおねえさんを見つめ返す お姉さんは今までに飼ったゆっくり達と、その思い出を楽しそうに説明してくれた お姉さんにとっては美味しかったスイーツの話なのかもしれなかったが、れいむにとっては恐ろしい拷問のような時間だった なんとか恐ろしーしーだけは我慢していたれいむだったが、もうその目からはとめどなく涙があふれていた 『はぁ、私なにゆっくりに説明してるんだろう。まあいいわ~とりあえず、れいむには私に食べられてもらうわよ?』 「んんんん!んんん!んんんんー!」 『あら嫌?でもごめんねー、私がれいむを買ったのはそのためなの。付き合ってくれないのなら捨てちゃうしかないんだけどなー』 目を潤ませていやいやと首を振っていたれいむだが、うつむいて何かを考え始める (のらはゆっくりできないよ、でも、むーしゃむーしゃされるのはもっとゆっくりできない……) 「んんーんーんんー!」 『ああごめんね、このままじゃ喋れないよね?』 べりべりとガムテープをはがされて、ヒリヒリする口の痛みを我慢しながられいむは訴えた 「ねえ、おねえさん、おねえさんはあまあまさんがほしいんだよね たしかちかくにこんびにさんがあるから、そこであまあまさんをかってきてれいむといっしょにたべるっていうのは?」 『嫌よ、わたしはゆっくりが食べたいの☆』 あっさりと笑顔で却下される 「ゆゆゆぅ、ゆぅぐぅうううう、ゆわぁーん!れいむ、しにたくないよぉ!でものらもゆっくりできないぃぃ! れいむあまあまじゃないよぉ!むーしゃむーしゃしないでよぉ!どおすればいいのぉ!?」 とうとう泣き出してしまうれいむ そんなれいむに優しく微笑みかけ頭をなでながら、お姉さんは言った 『大丈夫よ、もしもれいむが美味しかったら、絶対に死なせたりしないから』 れいむが泣き止むのを待ってから、お姉さんはれいむにルールを説明した 一つ、傷は必ず治療する 一つ、お飾りには手を出さない 一つ、オレンジジュースを使わなければいけないような致命傷は与えない 一つ、おやつの時間以外は今まで通り普通にペットとして飼う 『あと、できれば暴れたり泣き叫んだりしないでほしいけど、さすがにそこまでは要求しないわ』 むしろ全力でもがいてね☆その方が私がゆっくりできるから そういって笑うお姉さんの顔は言葉の意味はともかくとっても優しそうで、れいむはとうとう首を縦に振ってしまった れいむの合意が得られるや否や、お姉さんは嬉しそうに台所から箸を持ってきた 準備は万端である 『えへへ、いままで全部手づかみだったから、こうやってお箸を使うと緊張するなぁ、えいっ!』 お姉さんはれいむの右頬に箸を突き刺し、ぐりぐりと一口分切り取った ペットショップ育ちのれいむは特に餡子が出てしまうほどの喧嘩をしたこともなく、生まれて初めての激痛に目を向いて耐えるしかなかった ガムテープでふさがれた口の中で、砂糖菓子の歯が欠けてしまうほどに歯を食いしばっている その様子を見ながら一口目をゆっくりと味わっていたお姉さんの顔に、綺麗な笑顔が咲いた 『れいむ、あなた、合格!』 もう一度右頬に箸を伸ばすお姉さんの手を、れいむは絶望的な気持ちで見つめている ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ 自分の中の餡子が空気に触れる痛み、傷口を箸に抉られる痛み、皮が少しずつ千切られる痛み もう耐えられない!見開いた目玉がグリンと裏返り、とうとうれいむが気絶してから、 様子を観察しながらパクパクとれいむを食べていたお姉さんの箸が止まる 『お箸じゃ10口が限界かー、でもこれならダイエットにはちょうどいいかもね。』 食べたりない気持ちを堪えつつ、お姉さんはれいむの頬に水に溶いた小麦粉を塗りたくっていった 『れいむ、おはよう!そろそろ起きてね~』 次の日の朝、れいむは昨夜の悪夢なんてなかったかのようなお姉さんの優しい声に起こされた 『ご飯はいつものところにあるからね、ラジオのスイッチは修理しておいたから、ボールはまた今度ね』 お姉さんは早口でいつものようにれいむに注意を与えると 『じゃあいってきますー』と、 れいむの「行ってらっしゃい」を聞く間もなく慌ただしく仕事へ出かけて行った あまりにもいつも通りの朝だったため、れいむは昨日の夜の出来事は夢だったのだと思おうとした しかし、柔らかいタオルの寝床から動こうとすると、右頬が引きつるように痛んだ その事実に泣きそうになりながら、れいむは空腹を訴える体の為に今日のご飯を食べることにした 『いっただっきま~す』 昨日抉られたばかりの右頬を、畳にこすり付けられるように固定されて、れいむはすでに涙目になってしまっている 今日のお姉さんは、横倒しにしたれいむを太ももに挟んで固定しながら、手に持ったスプーンをれいむの左頬につきたてた 『うーん、意外と弾力があるのねぇ』 しかしスプーンではなかなか饅頭の皮が破れず、れいむは体中の餡子を捏ねくりかき回されるような圧力を感じて吐きそうになっていた お姉さんはれいむを挟んだ足を動かすのがめんどくさいらしく、刺さらないスプーンで何度も頬を抉ろうとしている れいむの頬の皮がゆるゆるになってとうとう破れ目ができた頃には、 中枢餡を揺さぶられ続けたれいむは口の中に湧き上がってくる餡子を飲み込むことに必死になっていた スプーンにすくって一口、昨日よりも少しだけ美味しくなった餡子に満足しつつ、お姉さんは足の間のれいむを楽しむ 昨日と違い一口分の餡子が多いためか、5口程度でお姉さんは満足して今日のおやつの時間は終了した ごく稀に、お姉さんはれいむを朝の散歩に連れて行ってくれたりする 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっくりはねるよ!」 『れいむったら、そんなに走ると転んじゃうわよ?』 普段は部屋から出られないので、れいむは散歩の時間が大好きだった お姉さんの朝ごはんを買いにスーパーへ行くだけの短い道のりだが、途中には小さな公園がある 「ゆぷぷぷぷっ、なんなのぜ?あのゆっくり」 「ほんと、れいむのほうがだんっ!ぜんっ!びゆっくりだよぉ~?」 「かいゆっくりのくせに、いなかものなすがたね?」 「……ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 『もうれいむ、待ってってば~』 リードはつけられていなかったが、れいむは「のらはゆっくりできない」と教育されていたため逃げ出そうとしたことはなかった だから今日も、お姉さんはれいむの後ろを歩いて付いてくる 頑張って跳ねたが、お姉さんは歩いて後ろからついてくる スーパーについたお姉さんはニコニコしながられいむの為にクッキーとオレンジジュースを買ってくれた 頬が再生していないれいむは、怯えたような目でお姉さんの手に持ったストローを見つめている お姉さんも少し不安げな様子で、れいむの目にゆっくりとストローを近づけていく 『やたっ!刺さった!』 目の中に刺さったストローがぐりぐりと動かされ、れいむは自分の目がドロドロぐちゃぐちゃと形を失っていくのを感じていた 溢れてくる涙さえ目玉を崩す速度を速めるばかりだった 夢中になってストローを動かしていたお姉さんだが、れいむの涙が枯れかけた頃にようやくその手を止めた 『いただきます』 ずずずずずずずずずずずずっ まるでシェイクを飲んでいるような音を立てながら、ストローがれいむのおめめを吸い上げていく 瞼を閉じられないように張り付けられたセロテープを憎みながら、れいむは残った目からお姉さんの顔を見つめていた その後、寒天を流し込まれて瞼をセロテープで閉じられたれいむは、眼窩の異物感になかなか寝つけなかった お姉さんは時々とても早く仕事から帰ってくることがある そんな時はとてもれいむに優しくしてくれて、一緒にボールで遊んでくれたり本を読んでくれたりする 今日も早めに帰ってきたお姉さんは、れいむにお土産をくれた 『はいこれ、治りが遅いみたいだからね~』 それは、コンビニで買ってきたのであろうまだ温かいあんまんだった 自分の為にお茶を入れたお姉さんはれいむを膝に乗せて、優しくなでながら自分の分のあんまんを食べ始める れいむも夢中になってあんまんを貪った 『ほら、口のまわり汚れちゃってるわよ?そんなに焦って食べなくっても取ったりしないって』 お姉さんは優しくれいむの口の周りを拭ってくれる れいむは何も言わずに、あんまんを食べていた ガラスの冷たい感触に震えながら、れいむは窓に押しつけられていた 夜だったため、鏡のように少しだけ後ろのお姉さんの姿が見えた お姉さんは、その手にフォークを持っていた れいむはギュッと目を強くつぶると、もう何も感じまいとした しかし、ぷすっと体に冷たい金属が刺さり自分の背中の皮と餡子をごっそりと持って行かれる感覚に、体を震わせて涙を流さずにはいられなかった 歪な凸凹の再生しかかった頬の上を涙が流れて畳の上に小さなシミを作っていく 『………』 お姉さんの顔は、真剣そのもので冷たく、とても怖かった 「ねぇ、おねえさん」 『なあに、れいむったら真剣な顔しちゃって。わたしもう会社いかなきゃいけないから夜にしてねー?』 ばたん 今日もお姉さんはれいむに朝ごはんをくれて、慌ただしく出かけて行ってしまう れいむは閉まったドアを見つめながら、今日も口の中で「おたべなさい」と呟いてみる しばらくして、れいむはくるりと振り返って部屋の中に戻っていく だんだんと豪華になっていく朝ご飯を食べるために そしていつか、お姉さんに食べきってもらうために 過去作 anko4450 『大好き実ゆ』 anko4159 『深夜のおやつ』
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注意!!! 何を注意すればいいのかよく分からないのです。 とにかく何が起こってもうろたえない方、どうぞ。 とあるマンションの一室にて。 男女の営みを終えた二人がベッドの上で話す。 「ねぇ、あなたは一体何者なんですか?」 「何さ、藪から棒に。俺は俺。それ以上でも、それ以下でもないよ」 「・・・あのね、わたし、あなたのこともっと知りたくて、 あなたの同級生の人たちに聞いたの。学生の頃はどんな人だったの?って」 「そしたら、みんなあなたの事なんて知らないって言うの 一人が卒業写真を見せてくれたんだけど、あなたは載ってなかったわ」 「・・・」 「あの、」 「・・・こーゆーはなし、しってる?」 「え?」 昔々、とある山奥に二人の親子が住んでいた。 「ねー、おとうさん どうしてれいむのからだとおとうさんのからだはちがうの?」 「うるせー! この豚饅頭野郎!!!」がしゃーん!!! 「てめーの顔なんか見たくもねえええぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃあああああ!!! どぼぢでただくのおおおぉぉぉおお!!!」 ぼてぼてぼて。れいむが普通のゆっくりと違う点。それはこのれいむには体があった。 このれいむの親は山奥で一人寂しく暮らす男の家に侵入し、虐待され尽くした後で殺された。 男はさすがにやりすぎたかなと思ったが時すでに遅し。 死体をかたづけようとすると、赤ゆっくりが出てきた。 まぁ、子ゆっくりの一匹くらい育てても大丈夫かなと考えそのまま育てることにした。 れいむは生まれたときに最初に見た男が自分の親だと思いこみ、 自分は人間の子だと思いこむようになった。 そのせいかどうかは定かではないが、れいむに体が生えてきた。 男は気味悪がった。 ゆっくりと言えば顔だけの駄饅頭。 それに四肢が付くなんて。 きめぇ丸やれみりゃのような体付きを見たことのない男が思ったのは 自分が虐待して殺したこのれいむの親の呪いではないだろうか。ということだった。 それから、男はれいむに日常的に虐待を繰り返すようになり、 れいむは男の元を離れた。 「ゆー! あんなひどいじじいとはくらせないよ!!!」 れいむは生まれて初めて山を降り、 男が麓にあると言っていた町に向かった。 れいむが町を歩くと道行く人々はみな指を指してひそひそ話。 「かわいくってごめんね!!!」 ウインクしながらポーズを決めるれいむ。 「おや、体付きれいむなんて初めて見たよ。」 「ゆっ! おにいさん、ゆっくりしていってね!!!」 「ふふふ、れいむ、僕と来ないかい? 君を一躍有名人にしてやるよ」 それから、珍しい体付きれいむは見せ物小屋やTVショー、週刊誌に載り 全国にその姿が知れ渡った。 しかし、数ヶ月もすると、皆れいむのことなど忘れた。 金儲けの種にならない事を悟った男はれいむをゆっくりんぴーすに引き渡し、 自分は儲けた金の全てを持ってどこかへ行った。 ゆっくりんぴーすでは世にも珍しい体付きれいむと言うことで大変重宝された。 れいむはとても幸せだった。 美味しいご飯を沢山食べることが出来るし、暇になれば職員が遊んでくれる。 れいむのわがままは全て叶えられた。 しかし、一つだけ不満があった。れいむには友達がいない。 どこで仕入れた知識だろうか、ある日れいむは言った 「れいむは『がっこう』にいきたいよ!!! それで、おともだちがほしいよ!!!」 早速近くの小学校に転入することが決まった。 転入前日 「あしたから『がっこう』だよ!!! おともだちいっぱいつくるよ!!!」 「では、れいむさん、自己紹介してください」 「れいむはれいむだよ!!! みんな! ゆっくりしていってね!!!」 れいむは満面の笑みと張り裂けんばかりの大声で挨拶した。 「ぅっせぇなー」 耳を塞ぎながら、生徒の一人がぼやいた。 その日の昼休み。 「みんな、ゆっくりしようね!!!」 「うわぁ、なにあれ・・・」 「キモッ! あれってずっと前にテレビに出てた糞饅頭じゃね?」 「あ、たっちゃんってあのれいむ大嫌いだったね」 「話しかけんなよ糞饅頭!」 「ゆ! なんでそんなこというの!? れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよ!!!」 クスクス 「なにあれ、饅頭が人間ぶってない?」 「ゆっ!?」 「ゲラゲラ、体付きなだけで人間になったつもりなの? 馬鹿なの?」 「「「ゲラゲラ」」」 「ゆぅ!?」 「なんでそんなこというの!!! れいむはにんげんさんだよ! みんなでゆっくりしようよー!!!」 「嫌だよ」 「なんでお前のような害獣なんかと仲良くしなきゃいけねーの? 冗談じゃねーよ!」 「ゆ、ゆぐ、、、どぼじでそんなごというのおおおお!!!」 「うわ、泣いたよ。」 「きもっ! 饅頭泣き顔キモッ!!!」 「ゲラゲラ」 れいむが泣いても誰もれいむを助けに行かない。 それどころか、益々馬鹿にしたり笑ったり。 そして午後の授業 「クスクス」 「ケラケラ」 れいむは直感した。 これはれいむを馬鹿にして笑っているんだ。 今までテレビや見せ物小屋で笑われてたときはみんなれいむと仲良くするために笑っているのだと 勘違いしていたが、昼休みの一件から人間のひそひそ声やかすかな笑い声が とても不快な物へと変わっていった。 「先生ー、餡子臭くて授業に集中できませーん」 「先生ー、僕もー」 「え、何、何で? 誰かお菓子持ち込んだのか?」 困惑する教師。 「えー、そんな事する奴いないでしょー」 「きっと誰かが饅頭臭いんだよー」 「プークスクス」 「ゆー! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!!」 昼休みに饅頭と罵られたれいむは饅頭という言葉に敏感に反応した。 「だれもれーむを饅頭なんて言ってないよねー」 「ねー」 「黙れ!!!」 ばーん!!! 教師が怒鳴り教卓を強く叩くと教室内が静まりかえった。 「お前達の言いたいことはよく分かった、○○と○○と、・・・後で職員室に来い」 中間休み。 授業中にれいむを馬鹿にしてはしゃいだ数名が教師にこっぴどく叱られ、 戻ってきたころには全員泣きはらしたのか、目の周りが真っ赤だった。 その日の残りの授業はれいむのクラスだけが延々と道徳の授業を行った。 クラス全員が不機嫌になった。 ある子供は余計な波風を立てる馬鹿なクラスメートに、 ある子供は突然やってきた空気の読めない体付きれいむに。 そして、その日最後の授業の時間。 クラスの女子が海外に引っ越すことになっているらしく、そのお別れ会となった。 その頃には教師により、いじめっ子達が制裁されたことにより、れいむの機嫌は良くなっていた。 そして、放課後。 「おいコラ! 糞饅頭! てめーのせいで怒られたじゃねぇかよ!!!」 がっ! 「いだいいいいぃぃぃぃいい!!! やべでええぇぇぇぇえええ!!!」 「うるせえよ!!! 大体、何でてめーのような害獣をクラスメートにしなきゃいけねーんだよ!!!」 ぼこすかとれいむをリンチにする少年達。 「ゆぎゃああああ!!! いだいいいいぃぃぃ!!! ぼおやべでえええええ!!!」 泣き叫んでも少年達の怒りは収まらない。 れいむの頭が変形し、所々餡子が染み出した頃。 「こら! あんたら! なにやってるの!!!」 「うわ、やべ・・・」 今日、お別れ会をした少女だった。 少女は教師に言いつけ、怒り心頭の教師は体育館裏でたむろしていた少年達を見つけ、 さっきよりも酷く叱り、説教した。 「ありがどおおおお!!! おでえざん!!」 「あはは、別に良いのよ。私アイツらのような悪ガキ大嫌いだし」 少女がれいむに肩入れしたのはれいむのためではなく、 たとえどんな相手であろうともいじめのようなゲスな行為を許さない性格の為である。 「ゆっぐりじようね!!! これがらもでいぶどいっじょにゆっぐりじようねええええ!!!」 「ごめんね、私、明日からもうここにはいないの。」 「ど、どぼじで、どぼじでなのおおおおおおお!!!」 お別れ会の意味も理解できなかった餡子脳が叫ぶ。 少女は丁寧に自分が海外に旅立つことを伝え、別れの挨拶を言った。 「ゆっぐりじでいっでよー! ゆっぐりじでいっでよー!!!」 「きっとまたいつか会えるよ、じゃあねー」 そう言うと少女は急いで帰っていった。 「もうがっこうには行かないよ!!!」 ゆっくりんぴーすに戻ったれいむはそう切り出した。 今まで友好的だと思っていた人間が自分を饅頭だと罵り、虐めてきた。 せっかく仲良くなれると思った子はいきなりいなくなった。 もはや学校に行きたいなどとは言えなかった。 職員は最初困惑したが、れいむが傷だらけであったことと、教師の証言から、 学校で虐められた事を把握し、責任者を交え会議した結果、れいむは学校に行かせず 自分たちで育てることにした。 そしてその次の日から、れいむに自分が人間でなく饅頭「ゆっくりれいむ」であることを教え込んだ。 「ゆー! ちがうよ! れいむはにんげんさんだよ!!! おかしなこといわないでね!!!」 最初こそ否定したが、様々な例を交え、根気よく教え込んだところ、 数週間掛けて自分が饅頭「ゆっくりれいむ」であることを理解した。 「れいむはにんげんさんじゃなかったんだね・・・、だからいじめられたんだね・・・」 れいむは悲しげに呟くが職員はこれで悩みの種が一個減ったことを喜んだ。 れいむが自分の正体を悟った次の日から、職員はれいむと通常のゆっくり種を引き合わせ、 仲良くさせようと試みた。 しかし、 「ゆっ! へんなれいむとはゆっくりできないんだぜ!!!」 「どぼ(ry」 「れいむのはじさらしはさっさとしんでね!!!」 「ゆ"うう"ううう"うう"う!!!」 通常種達はれいむをけなし、迫害した。 もともとゆっくりというナマモノは異端を徹底的に攻撃する傾向にある。 れいむは異端中の異端だった。 職員達は何とかれいむをゆっくり達と仲良くさせようと頑張ったが全て無駄だった。 そんな中、れいむは「人間になりたい」と言うようになった。 「れいむ、にんげんさんになって、やさしいおねえさんとゆっくりしたいよ」 「にんげんさんになってかわいいあかちゃんほしいよ」 人間になればもう、人間からは虐められない。 自分を迫害するゆっくり種ではなくなる。 この二点を求め、職員に懇願するが、それはさすがの職員達にも叶えられなかった。 それから数年後・・・。 「れいむ、この方が体を提供してくださる男性だ」 「こうしてれいむは人間の体を手に入れ、綺麗なお姉さんを恋人にしてすっきりー! しましたとさ」 「・・・え・・・ぁ」 みるみる女の顔色が悪くなる。 「まさか、あなたが・・・」 今にも失神しそうな顔だ。 「お、おいおい、俺はれいむじゃないぜ? しっかりしろよ」 「ひっ! じゃ、じゃあまりさなの!?」 「なぜにそうなる」 男はふぅと一息ついて話し始める。 「なあ、君。俺と君はそれぞれ何歳だ?」 「え、23・・・くらい?」 「両方とも?」 女はこくりと頷く。 「残念、君は23だが俺はもう3Xだ。」 「え? そんな、だって一緒に入社式に出たじゃない!」 「確かに入社式は一緒に出た。」 「俺はな、まだ社会人成り立ての頃に交通事故にあってな、 しばらく植物人間になってたんだよ。 しかもなぜかは分からんがその間体の成長も老化も完全に止まったらしいんだ。 んで、事故から数年、俺は奇跡的に回復したんだよ。 そして、俺はリハビリに勉強に、就活。全て病院でこなしたのさ。 それから、君と出会った訳だ。 だから、俺の出身校に行っても俺の事なんて知ってる奴がいないのさ。 なんせ、俺の同級生は君よりもずっと年上だもの。」 「なんだ、そう言うことだったんですか。焦りましたよ、全く、もう」 「そうかいそうかい、今度、俺の家に来な。おじさんの卒業アルバム見せてあげるから」 「はぁい! それにしても、良くできた話ですね。 私、すっかり騙されちゃいましたよ」 「全て嘘ってわけじゃないさ」 「え?」 「俺が植物状態から回復した理由はな、 話の最後に医者がれいむに言ったろ? 体を提供云々。 あの医者もよほどせっぱ詰まったんだろうね。 俺の体をれいむにやるって言ったら、俺の意識が回復したそうなんだ」 「え? それじゃあ・・・」 「話のれいむの事は最後の人間の体を手に入れて、以外は全部本当のことさ。」 「あ・・・あ、」 「そ、そのれいむは今どこに?」 「病院さ、俺の体が意識を取り戻して、れいむにやる体が無くなったら、 今度はれいむが植物人間ならぬ植物ゆっくりになったそうだ。見に行く?」 二人が病院に向かうとれいむはベッドに寝かされ、 額にはオレンジジュースの点滴の針が刺されていた。 「これがそのれいむさ。」 「れいむ、れいむ! 私よ! 覚えている!?」 男が何やってんだよと突っ込もうとした瞬間、れいむが目を覚ました。 懐かしい声だよ! 学校で優しくしてくれたお姉さんの声だよ!!! 「懐かしい声がするよ・・・、学校で優しくしてくれたお姉さんだね」 しわがれた声でれいむはしゃべる。 「そうよ! 私よ!」 れいむが目を開ける。 「ゆぅ? おねえさんだれ?」 年月は少女の面影を女から奪い取っていた。 「ふふ、仕方ないよね。あのときからもう十何年も経っているもの」 「ゆっ! 十何年も!!!」 れいむがそう言うと突然れいむの体が黒ずみだしてきた。 「なんでおごしだの!? なんで、なんで」 普通、ゆっくりの寿命は数年程度である。 れいむは自分がゆっくりであることを理解していた。 だから、今の自分がものすごく年をとり、死んでしまう年齢となったことを認識した。 その瞬間、体は急激に劣化を始め、れいむから生命が逃げていった。 「もっと、ゆっくり、した、かった、よ」 れいむは切なる願いを述べて息を引き取った。 終わり 言い訳タイム 年齢計算は合ってるかなぁ? →何も考えずに書いてたからよくわからんのです ここがおかしい →こめんなざいいいいいいいぃぃぃいい!!! 本当は数KBのショートSSにしたかった。 でも気付いたら結構長めになった。 今まで書いたSS ドスまりさとゆうか1~3 ゆっくり闘技場(性)1 不幸なきめぇ丸 名物餡玉 行列の出来るゆっくり スカウトマンゆかりん前・後 ファイティング親子とゆっくり まりさの商売 ぱちゅりーの失敗1~4 盲点 進化 ぶっかけ!ぱちゅりー!